マンスリー・レポート No.79 (2007年7月)
活動会員のレポート
  JETRO専門家としてインドへ
  小室こむろ 洋三ようぞう(元 大倉商事)

 2006年10月から4ヵ月間、私はJETRO(独立行政法人日本貿易振興機構)が経済産業省より委託を受けて実施する貿易投資円滑化支援事業(通称JEXSA事業、JEXSAはJETRO Expert Service Abroadの略)の専門家としてインド北西部を管轄するPHD商工会議所(PHD:パンジャブ州、ハリヤーナー州、デリー)に派遣されました。

 この事業は、開発途上国の中長期的な経済発展を確たるものとし、内外経済活動の円滑化を図る観点から、開発途上国の業界団体、人材育成機関等へ専門家を派遣し、助言、指導を行うことを目的としています。対象分野は、貿易円滑化に資するものとして、(1) 知的財産権の保護、(2) 基準認証の制度整備・共通化、(3) 物流の効率化、(4) 環境・省エネ、(5) 産業人材育成の重点5分野から選定されますが、今回の派遣では、(5) にあたる同商工会議所の政策提言機能、相談対応機能およびイベント実施機能の強化がテーマとなりました。

PHD HOUSE前で 筆者
PHD商工会議所会員からの相談を受ける同商工会議所海外部長および次長と筆者(左)
 4ヵ月の短い期間でしたが、政策提言機能については、同商工会議所が政府に対し具体的な政策提言ができるよう、インドの経済発展にとって重要な国内物流(未整備なインフラ)の問題点を洗い出し、整理するため日系企業を中心に会議所職員と共同で調査を行いました。この調査報告は、今後、インドへの進出を計画する日系企業にとって現地事情を知る上でもタイムリーな情報提供となりました。

 日本企業とのビジネス提携を希望する現地企業からの相談が数多くあり、同商工会議所内には対日ビジネスを専門に対応できる職員がいないため、マニュアルを作成し、彼らを指導しました。相談案件は思いつき程度のものが多く、また時間的な制約もあったため、日本企業との橋渡しはできませんでしたが、その潜在性の大きさを実感しました。

 イベント実施機能強化の一つとして、同商工会議所とJETROとの共催により対日投資に焦点を合わせたセミナーを開催しました。国際会議、セミナーなどの企画・運営はインド人が得意とするだけに、特にアドバイスする必要もありませんでしたが、テーマがインドからの対日投資でしたので、その関心度合について心配しました。しかし、参加者の日本への投資関心は強く、活発な意見交換がなされ、IT以外の分野でもインド資本の日本進出が近いことを感じました。


 さて、20数年前に約6年間インドに駐在しましたが、今回の滞在で一番変化を感じたのは、インド人の顔つき、特に目つきがずいぶんと穏やかになったことです。近年経済成長も著しく、一般的に生活が豊かになったせいでしょうか。

急速な発展が続くデリー郊外グルガオン市のショッピングモールと高層マンション
二重三重の駐車

 次に車の大洪水です。でも運転マナーの悪さは相変わらずで、横断歩道があっても怖くて渡れません。信号が赤で止まっていれば、後ろから何故か「早く行け」との警笛?が…。一刻も待っていられないのに、会議は相変わらず定刻に始まったことはありませんでした。

 また、デリー郊外のショッピングモール、高層マンションなどは当時では想像もつきませんでした。また、以前は水道水を煮沸、ろ過して飲んでいただけに、ミネラルウォーターが一般的に出回り、「水」が安心して飲めるようになったのも大きな変化の一つでした。

 これからのインドが大いに注目されますが、確実にグローバル化されているのは事実のようです。

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