マンスリー・レポート No.76 (2007年4月)
活動会員のレポート
  コロンビア共和国マニサレスより
  JICA海外シニアボランティア コロンビア貿易振興 (元 日立ハイテクノロジーズ) 高橋たかはし 一郎いちろう

 コロンビア共和国の首都ボゴタ市から双発のプロペラ機で北西へ約280km、時間にして約30分飛行するとカルダス県の県庁所在地であるマニサレス市に到着する。

 チリから北上するアンデス山脈がコロンビアで3つに枝分かれし、西側からそれぞれオクシデンテ山脈、セントラル山脈、オリエンテ山脈となる。マニサレス市はオクシデンテ山脈とセントラル山脈の間に位置する標高2,100mの高原都市である。

 2006年4月にJICAの海外ボランティアとして当地に赴任し、カルダス県庁の経済開発局国際関係課に席を置き、地元中小企業の輸出促進のための支援活動を行っている。

 カルダス県はコロンビア第2のコーヒーの産地で、その大半は海外諸国に輸出されていて、日本は米国に次いで第2番目のコーヒー輸出相手国である。また2004年に日本で開催されたサッカーのトヨタ・カップには地元のプロサッカーチームのオンセカルダスが参加しており、当地の人々は日本人に対してとても友好的である。

支援企業との打ち合わせ(筆者左)

 活動の拠点であるマニサレス市は人口約38万人の小都市で、山の背に細長く発展した、周りを緑の山に囲まれた静かな街である。緯度で言うとマレーシアの首都クアラルンプールとほぼ同じ位置で、地図で見ると熱帯を想像するが、実際は年間の平均気温が摂氏18度で、大変過ごしやすい気候の地である。

 県の失業率は2005年で13.6%と前年に比較して減少はしているものの依然として高い水準にあり、経済開発局の輸出振興の最大の目的は雇用機会を増やし、失業率を改善することにある。

 こうした背景の下で、どのような支援が適切で効果があるかを経済開発局、商工会議所と相談した結果、輸出支援を希望する中小企業を募り、その中から15社を選択し、現場に足を運び、支援活動を実践することにした。各企業により輸出の経験の度合いが異なるので、実態を調べながら、ある企業には貿易のイロハから、またある企業にはマーケティングの方法など、各企業ごとに指導プランを作成しながら支援活動をしている。現実には、製品の品質、それに関係する工場管理や人材育成の問題等、輸出する以前に解決すべき課題がいろいろあり、どこから手をつけたらよいか戸惑うことがある。

マニサレス市の中心部

 これら諸問題については、今までの経験から助言できることは指導し、できるだけ専門の輸出に的を絞り支援活動をしている。しかしながら、貿易とはこうあるべきといったような押し付けではなく、しばらくは、相手企業との相互信頼関係を築くことに重点を置くべく、できるだけ相手の話に耳を傾けることにした。JICA作成の日本紹介シリーズのDVDを上映し、感想を聞いたりしながら、徐々に相手の懐に入るように工夫をしたりもした。まだまだ不十分であるが、徐々に手ごたえを感じ始めている。前回の打ち合わせ時に出しておいた宿題をきちんとやっているかな、などと考えながら企業訪問をするのがだんだん楽しみになってきている。

 2006年5月には米国との自由貿易協定が締結され、米国議会の批准を待っている状態だが、これが発効するとカルダス県を取り巻く貿易環境も劇的に変化することが予想される。赴任後1年が経過し、残り1年は、短すぎるが種まきだけはしておきたいと、せっせと畑を耕し水をまいている日々である。

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