マンスリー・レポート No.50 (2005年2月)
活動会員のレポート
  国際見本市「Baby & Kids Fair Japan 2004」の通訳
    藤田ふじた 敬子けいこ(元 欧州系投資銀行)
筆者(オーストリア企業のブースで)

 2004年11月17日から19日までの3日間、東京ビッグサイトで開催された「Baby & Kids Fair Japan 2004」という国際見本市で、オーストリア企業のために日英通訳を務めた。

 このお話がABICからあったのは「国際社会貢献センター」という名称が私の頭から消えかかっていた11月初旬ごろであったが、ABICのコーディネーターの方に前もってオーストリア大使館の商務部へ案内していただいて、担当者から直接説明を聞くことになった。

 同国企業の主要製品は「パシファイアー」だと言われたので、それは何かと尋ねたら「おしゃぶり」だとの答えが返ってきた。頭の中に「Pacific Ocean(太平洋)」が浮かび、動詞の「Pacify」は「太平にする」であるから、名詞の「Pacifier」は「平安にするもの」、すなわち「しゃぶると気持ちが安らかになるもの」なのだと納得がいった。準備期間も十分あったので、同大使館から借用した資料を十分に検討することもできた。このようなABICの配慮には感謝している。

 展示会初日は、早めに家を出て、あらかじめ伺っていたとおりJR浜松町駅でバスに乗り換え、30分ほどバスに揺られながら、両側に広がる東京湾の濁った水を横目にしているうちに、東京国際展示場に着いた。バスを降りてガラスと鉄骨でできた大きな建物に足を踏み入れ、広い空間をひたすら展示場をめざして歩き、やっとロフトのような展示場にたどり着いた。

 ちょっとした手違いはあったものの、開場時には同国企業の展示担当者である30〜40代のドイツ人男性とオーストリア人女性と初めて挨拶を交わすことができた。展示品の説明を受け、来場者への説明や両者間のやりとりを通訳しているうちに大方の仕事の内容は把握することができた。午後になると、同社の責任者に加えすでにお会いしていた大使館商務部の担当者も顔を出したので、ブースはいっときドイツ語圏と化していた。

 同国企業の製品は小児科医や歯科医、オーストリア大学デザイン科などとの協力のもとに研究・開発され製造されたもので、小児の顎や歯の健全な発育を促すことに重点の置かれていることが強調されていた。豊かな少子国をマーケットとし、価格は製品に見合った線を崩さず、毎年デザインを変えているとの説明だった。確かに納得のいく製品であり、配色も良く、小児の健康および情緒の発達にかなった製品であるという印象を受けた。ブースを訪れる人は小売業者、保母さん、小児科医、看護師、ドラッグストア店主等さまざまであったが、これら製品に強い関心を示し、評判は上々であった。

 同社は製品展示しながら日本総代理店を募集していた。応募者は初日からぼつぼつ現れ、活発なやりとりが何度か展開された。2日目になると、代理店ではなく合弁相手を探す方向へ方針が変更された。結局、3日目の午後、同じ展示場で米国の輸入品を扱っていた馴染みの日本企業と合弁契約の具体的な交渉に入り、話はほぼ煮詰まったようだった。

 今回の通訳業務の経験から、私はオーストリアとドイツの違いに気付き、オーストリアの歴史と文化に新たな関心を抱くようになった。このような機会を与えてくださったABICに深い感謝の念を表してこの報告を終わりたい。ありがとうございました。

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