マンスリー・レポート No.8 (2001年3月)
宮内事務局長  2月7日「NHKラジオ夕刊」に出演
――商社マンの国際貢献活動を語る

松尾(NHK解説委員)商社マンというと、達者な外国語を操って海外で活躍する人たちというイメージがあります。その商社マンたちがかつて身につけた能力や専門知識を生かして国際社会に貢献しようという活動に取り組んでおられます。今日は、その活動組織である国際社会貢献センターの宮内事務局長にスタジオにおいでいただいています。
 国際社会貢献センターを昨年春発足されたそうですが、その狙いについてお聞かせ下さい。

宮内事務局長 1998年に日本でもNPO法ができたのをきっかけに、日本貿易会の中にNPO活動に関する研究会を作りました。
 NPOは、欧米では非常に存在感がありますが、日本でどの程度可能性があるかという視点で1年間勉強したわけです。グローバリゼーションが進展する中、日本の国際化も顔の見えるODAを目指さなければならないと言われるなどいろいろな課題が出てきています。そのような中で人材の宝庫である商社をNPO活動に結びつけていけないかと考え、国際社会貢献センターを昨年4月に発足させたわけです。

長谷川(ラジオ夕刊・キャスター)何人ぐらいの方が登録されているのですか。

宮内 2月2日現在で889人です。

松尾 商社マンは英語だけでなく、それ以外にも1、2ヵ国語を話せる方が多いでしょうね。

宮内 約半分の方が、英語以外にフランス語やスペイン語、中国語、インドネシア語、ロシア語などを話されます。中には、タガログ語、ノルウェー語などを話す方もおられます。

松尾 現在、登録されている方は具体的にはどんな活動を希望されているのですか。

宮内 まだ発足して半年あまり経過したばかりなので、いろいろなことを開拓中です。ひとつは、政府のODAでの専門家派遣に人を紹介し、投資アドバイザーの専門家としてハンガリーに出しましたし、今後、パキスタン、エジプト、インドネシアなどにも出る予定です。
 われわれが期待しているのは、シニア海外ボランティアというJICAでやっている制度でチームで現地へ行き、現地の経済発展とか中小企業支援に何か力を発揮できないかというものです。

松尾 当番組でも、先日、前JICA総裁の藤田さんがシニアボランティアで海外へ行かれたことについて、電話でインタビューさせていただきました。商社の人たちというのは、そういった活動にうってつけでしょうね。

宮内 私も同感です。是非ともこれからそういう機会が増えればと考えています。

長谷川 志望先はアジアの国々が多いようですが、いかがですか。

宮内 日本から一番近くて縁の深い国ということで、アジアを中心に呼びかけた経緯もありますが、中南米、アフリカ、中近東、ロシア、中国を志望される方もたくさんいます。

松尾 いろいろな組織、団体からの要望と反響はいかがですか。

宮内 先日、ある新聞で「転んでもタダでは起きないと言われた商社マン」と書かれました。その記事を見てむしろ非常にうれしく思いました。日本の社会は、現在、何となく閉塞感がありますが、そういうときに商社マンのたくましさと明るさが改めて期待されている感じがします。それから高齢化社会を悪く捉えるのでなく、定年でひとつの仕事を終えた人が2回目、3回目の新しいチャレンジができると捉えてみれば、そういった機会を増やすことを、出会った人からも期待されているように感じます。

松尾 商社マンを派遣してほしいという要望もあちこちからずいぶんきているのでは。

宮内 この4月からいくつかの大学で講座を持つことになりました。具体的には、早稲田大学のオープンカレッジをはじめ、神戸大学、甲南大学で特別講座、これは半年かけて十何回の講座をいろいろな人がリレー形式でやっていくもので、ひとりひとりが自分の駐在した国とか、自分のやってきた仕事について話します。それによって、商社マンの情熱と経験をひとつのメッセージとして若い人に伝えることをわれわれも期待しているし、学校側も期待しています。

松尾 学生さんにとっては、現実に海外でビジネスをされた人の体験談は論文を読むより刺激になるでしょうね。

宮内 そうですね。外国のカルチャーの違いや、仕事の難しさ、楽しさ、危険な目にあったとか、面白いことがあった、そういったいろいろなことがわかってもらえればいいと考えています。

松尾 現実に海外に行かれる方は、今までの経験を生かして新しい国造りのお手伝いをされるという別の意義が出てくるのでしょうね。

宮内 ひとつの例として、日本外交予防センターというNGOが国連に協力してカンボジアで小型兵器の回収をしていますが、それを現地でマネージする仕事をOBの方が是非ともやりたいということで3月にプノンペンに行かれる予定です。ご自身は、新しい貢献ができるということで勇躍として行かれます。こういうエネルギーが商社マンの中にあるのだな、と改めて認識しました。

松尾 今後どんな活動を考えておられますか。

宮内 今、始めたばかりの大学とかODA関係。あと中小企業の方にいろいろ国際的な活動の人材を紹介できないかということを模索しています。また、地方自治体のさまざまな国際化の活動や留学生の支援を考えています。
 一方で、OBの方にITの世界をもう少し理解してもらうために内部で研修事業もやってみたいと思います。また、将来は人を紹介するだけでなくわれわれ自身で海外へ出ていって調査をしたり、経済発展に協力したりということを直接できるような力をつけられればと考えています。

松尾 どんどん夢が広がっていくわけですね。大いにご活躍ください。期待しています。

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