活動会員のレポート

ジェトロ「輸出プロモーター事業」専門家として日本産食品の海外輸出を支援
— 社会人人生の集大成として —

関原 せきはら 滋彦 しげびこ (元 住友商事)


ジェトロが運営する海外食品展示会で
担当企業の商談を支援する筆者(左端)

支援企業の担当者に同行し
マイアミの飲食店オーナーシェフとの商談支援を行う筆者(左端)

 和食は2013年にユネスコの無形文化遺産に登録され、2年後の2015年のミラノ万博を契機にその食文化も含めて世界的なブームを巻き起こした。日本政府はこの潮流をわが国の農林水産・食品事業のさらなる発展につなげるため、国を挙げて日本産農林水産物・食品の海外向け輸出ビジネスの促進を支援することとし、さまざまな支援事業を展開している。その一つが農林水産省がジェトロに委嘱している「輸出プロモーター事業」である。私は2016年度から同事業(当時の名称は輸出有望案件発掘支援事業)の専門家として、ジェトロの審査を経て採択された日本の農林水産・食品製造業者(特に中小企業)の輸出ビジネスを支援し、現在に至っている。これまでの10年間に担当した支援企業は延べ60社以上に上る。
 私は大学卒業後総合商社に入社し、フィリピン、ベルギー、英国の3ヵ国での海外勤務も含めて約30年間勤めた。2005年に早期退職し、1年間カフェスクールと東京・神田のベルギー料理の名店で調理も含めた勉強をさせていただいたうえで2007年に北海道札幌市で居酒屋を開業したが、相棒の妻が病に倒れ2年足らずで撤退、その後2009年に北海道の食品メーカーに再就職(勤務地は東京)し、そこで特命担当として同社が製造している加工食品の輸出ビジネスの立ち上げ業務に携わることとなった。商社時代、農林水産・食品ビジネスはどちらかといえば輸入畑の仕事が多い中、私は輸出畑だったこともありこの特命に約6年間、意欲的に取り組むことができた。この仕事を通じてジェトロが実施していた「輸出有望案件発掘支援事業」を知り、応募した。無事採択いただき、経験豊富な専門家の支援の下、香港、台湾、シンガポール向けなどの輸出ビジネスの立ち上げに一定の実績をあげ道筋をつけることができた。
 日本は少子高齢化を背景に人口減少が進み、日本の農林水産・食品事業者、特に中小事業者は将来の事業継続を見据え海外市場に打って出るところが多くあるが、言葉、貿易実務、海外ビジネス経験、人材など多くの課題を抱えている現実にあって、「輸出プロモーター事業」の支援が非常に有用であることはいうまでもない。支援内容は、輸出戦略・施策の立案と構築、海外バイヤーとの商談支援、国内外の展示会や商談会への同行支援、海外取引全般に関するさまざまな課題に対する適切な助言と指導などのいわゆる伴走型支援である。これら業務に関わる専門家の知見活用や出張旅費等も含めた一切の費用は国の補助金で賄われ、被支援企業の負担は発生しない。
 私は、商社時代に積み上げた輸出取引全般に関わる知見、飲食店での料理人目線は食品メーカーの商品を海外バイヤーに提案するうえでストーリー性と使い方(メニュー)の提案に極めて有用であり、食品メーカー時代にゼロから輸出事業を立ち上げた「現場感に基づく経験」等々も生かして、輸出に挑戦する多くの企業のお役に立ちたいと思うようになり、ABICの案内を受けて2016年度の専門家公募に応募し採択いただいた次第である。以来10年にわたり、私の社会人としての職歴と経験は全て現在の「輸出プロモーター事業専門家」としての仕事に生かされており、「無駄なことは何一つない」、まさに「社会人人生の集大成」と自負して仕事に取り組んでいる。