
総合商社に37年間勤務、そのうち12年の海外駐在を含めて、海外との貿易、投資、事業買収などの業務に取り組んだ。退職後は自身の知見を生かした公的業務に携わりたいと考え、某独立行政法人で日本の中小企業の海外進出のアドバイザーとして働いていたが、2024年初めにABICの紹介でご縁をいただき、現在は国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)でインド関係の業務に携わっている。総合商社在職中にインドに駐在する機会こそなかったものの、長らくインドとのビジネスを経験するとともに、職場の同僚としてインド人と共に働き非常に優秀な人材がいることも実感していたので、日本とインドの関係強化に役に立つ仕事であればぜひ取り組んでみたいと考え応募したものである。
現在は日本とインドの若手科学人材の交流促進に関する事業に携わっており、その内容について簡単にご紹介したい。
人口の減少傾向などの多くの要因があろうかと思うが、日本では理工系人材が今後細ることが懸念されている。一方インドでは人口の増加が続き、大学・大学院の理工系人材も900万人を超え、海外への留学生も約150万人と非常に多く、科学人材の供給国としての存在感も増しつつある。だが、その留学先はどこかと見てみると英語圏4ヵ国(米国、カナダ、英国、豪州)が大半で、日本へは全分野を合わせてもわずか約1,500人にとどまっている。この現状に鑑み、インドの優秀な科学人材にもっと日本の大学・大学院に留学し研究に取り組んでもらい、将来的な定着につながるような施策に取り組んでいる。
私が所属する部署では、長年アジアを中心とした多くの国々との人材交流事業に取り組んできているが、インドに関する事業の一部をご紹介する。
一つは、両国の協力を一層促進するための基盤をつくる二国間の交流事業として、2022年度から「日印大学等フォーラム」を開催している。第一回、第二回は日本、第三回(2024年10月)はデリー、第四回(2025年11月)はハイデラバードで開催した。第四回では日本からは49の大学・機関・企業など、インドからは35の大学・機関から経営層に参加いただき、各種取り組みの状況や成功事例の共有を通じ、さらに交流を拡大するために解決すべき課題について活発に議論していただいた。またインドに進出しインド人材を生かしている企業にも参加いただき、産学官連携の促進について踏み込んだ議論を実施いただくとともに、日本とインドの大学の個別の会談も実施して相互協力の促進について議論していただいた。(JSTのウェブサイト https://ssp.jst.go.jp/exchange/india/event/20251115.html)
加えて、「インド若手科学頭脳循環プログラム(LOTUSプログラム)」という施策も始まっている。両国の大学等研究機関による共同研究を通じて、インドの優秀な若手研究者が日本で研究に取り組むことを後押しすべく支援するもので、2025年度に新設された。始まったばかりの施策だが、一定の評価も既にいただいており、皆さまのご意見をいただきつつ、よりよい事業として続けていければと考えている。
今後とも関係する皆さまにご支援いただきこれらの施策に取り組むことで、両国のより質の高い交流の発展に微力ながらお役に立てればと考えている。