
商談会場にて(筆者)

商談会場の様子
独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)が毎年行っている海外CEO商談会にて、ABICより私を含め4人が商談会のファシリテーターとして専門的な支援をさせていただいた。
海外CEO商談会とは、中小機構が例年行っている中小企業振興事業の一つで、海外展開を目指す日本の中小企業と、日本の企業との連携を希望する海外企業の経営者とをマッチングさせる商談会である。2025年は、大阪・関西万博の開催に合わせ、5月から10月までの半年間にわたり、毎月5日間程度の頻度で、一般商材からAIや再生医療といった最先端技術まで、幅広い分野を対象に、大阪と京都の会場で行われた。例年は主に東京で開催されていたが、今回は大阪・関西万博に関連付けられたイベントとして、10月までは関西での開催となり、関西在住のABIC会員が初めて参加することになった。
海外からの参加企業は、インド、タイ、フィリピン、マレーシア、インドネシア、台湾からで、いずれも若く、エネルギーに満ちあふれた若い経営者が集まった中で、特にインドからの参加が多かった。インドの企業においては、「Make in India」のスローガンの下で、商品を売ったり買ったりというよりは、日本の技術を導入して合弁事業にしてインドでつくりたいという話が多かった。海外企業も日本企業も代表者同士の商談会であったので、一つの商談会は50分という限られた時間であったにも関わらず、それなりに結論を出し成果を上げることができた。
対象とする商材は、樹脂や金属といった従来からの一般商材に加えて、AIを活用したロボットやドローンなどのDX関係、最先端の再生医療やニッチな医薬品・化粧品・健康食品、さらにはサステナブルな社会のための環境関連とバラエティーに富んだものであった。最先端の技術については今回新たに学ぶことも多く、また医療関係では医学専門用語の応酬に頭が真っ白になり悪戦苦闘する場面もあったが、商談会のファシリテーションという役割については、なんとかお役に立てたのではないかと考えている。ABICからの参加者の専門分野はさまざまであるものの、まさに総合商社OBならではの幅広い知見と柔軟性が発揮できた良い機会ではなかったかと考える。
一方で日本企業はどうかと振り返ると、全般的なイメージとしては少し物足りないというか、熱量が少ないように感じた。日本の中小企業としては、円安に乗じて成長が期待できる海外展開を目指すべきと考えているものの、外国語でのコミュニケーションができない、英語での資料も用意していないという、商談会に参加する以前の問題もあるように感じた。
外国企業と話をしていると、今回は日本で日本企業のみとの商談会であるが、常に中国企業と比較検討していることがうかがえた。品質や信頼性については日本企業に一目を置いているものの、技術についてはほぼ互角、価格とスピードは圧倒的に中国が優位ということで、政治の動向に配慮しながらパートナー企業の選別をしているようで、インド企業はまさにモディ首相の全方位外交に沿った活動なのかと勝手に理解した。
日本企業と話をすると、円安の今こそ日本でモノづくりをして、輸出によって国内事業の停滞を打開したいところではあるが、中小企業では人手不足もさらに深刻化しているようで、今回の商談会では海外への製造委託の案件もいくつかあった。また、製品の輸出ではなく、生産設備を含めた生産技術の販売の案件もあり、日本のモノづくりも新たなビジネスモデルへの変貌の時期にきているように感じた。
今回の関西でのCEO商談会については、大阪・関西万博の閉幕とともに一旦終了となるが、またこのような機会があればぜひ参加し、日本のモノづくりの新たなフェーズに微力ながら貢献できれば幸いである。このような機会を提供いただいたABICに感謝申し上げる。