
新宮晋氏作「風の歌」前で(右から和又真一郎ABICコーディネーター、
筆者、大川智箕面高校校長、久保広正ABIC会員)

風に国境はない、風に舞う「元気のぼり」

大阪・関西万博大屋根リングの前、万博サクヤヒメ会議の17人で
(後列左から2番目が筆者)

授業の様子
今から15年前、丸紅(大阪)に勤務していた私は、ABIC創立10周年記念懇親会(大阪)の手伝いに参加し、企業OB・OGが社会貢献に取り組む意義を伝える勝俣会長(当時)のごあいさつを印象深く伺った。時がたち2023年、知己の世話人に声がけいただき入会。その初の活動で今回SDGsをテーマとする大阪府立箕面高等学校の出前授業に赴いた。
2015年の提唱から10年。現役高校生がSDGsをどう捉え、どんな話が若者に響くのかを考えながら、私自身の活動を振り返った。2020年3月丸紅を退職、翌4月から縁あって兵庫県三田市の広報・交流政策監となった。コロナ禍突入の頃だったが、私のミッションは広報や観光、町づくりの施策により市内外にファンを増やし、人口減少にも負けない持続可能な町を目指すことで、①観光振興で交流人口を増やす『さんだまち博(三田の町を遊ぶ博覧会)』、②故郷の自然環境を未来に伝える『三田さくら物語』、③次世代を生きる子供に笑顔と元気を贈る『新宮晋元気のぼりプロジェクト』を立ち上げた。今回の授業ではその中から今も私が携わる「元気のぼりプロジェクト」について、SDGsの目標4「質の高い教育をみんなに」と目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」の観点から紹介した。
三田市在住で風の彫刻家として世界に知られる新宮晋氏が、東北大震災を機に始めた「元気のぼりプロジェクト」は、大きな白布に子供が友達や家族と一緒にのびのび自由に絵を描き、出来た作品を大空に掲げ、地球の上を吹く風に舞う『元気のぼり』が見る人に元気を贈るという事業。アートという世界共通の言葉を使い、子供が互いに笑顔でつながっていく様子は見る人にも笑顔を届ける。授業では、未来に生きる子供に向ける氏の思いに共感し、より多くの人にこの魅力を伝えたいと思い、現在、仲間と共に大阪・関西万博会場での「元気のぼりプロジェクト」実現に向けて活動していることを話した。教育問題に関心が高いとのことで、多くの生徒が聴講してくれたが、いわゆる学校の教科とは違う、心を育む教育の大切さを紹介したつもりである。
目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」にも触れた。万博での実現に向けて一緒に取り組むのは、一般社団法人万博サクヤヒメ会議の仲間。ユニークな命名だが、大阪商工会議所が在阪企業で働く管理職の女性を対象に、後進女性のロールモデルとなることを目的として2016年に設けた「大阪サクヤヒメ表彰」第1期受賞者の内の17人で創った組織で、大阪での万博開催が決まった2018年に私たちも何か行動したいと発足した。検討を重ね、①女性活躍という言葉がなくなる社会を目指したい、②次世代を担う子供に働く楽しさを伝えたい、そして③未来に生きる世界中の子供に笑顔と元気を贈りたい、と始めた三つの活動の一つがこの「元気のぼりプロジェクト」である。
メンバーに共通するのは育ててもらった地域や社会に恩返ししたいという思いで、年齢や業界、環境はさまざま。できる人ができるコトをできる時に、が私たちのモットーだが、一人ではできないことが、共に考え悩み、工夫を凝らす間にいつの間にか前進かなっていると皆が実感しており、授業ではパートナーシップでやり遂げる醍醐味を紹介した。
SDGsのヒントは身近な生活の中にあり、気付いたら口に出し行動してみる、自分がワクワクしなければその楽しさは人に届かない、と結んで授業を終えた。商社で働いた縁で、商社OBが校長に就いておられる箕面高等学校で出前授業の機会を得たが、テーマに挙げたその新宮氏が40年も前に同校に作品を寄贈していたという偶然の縁も重なった。生徒たちが私の拙い話に少しでも何かを感じ、それが記憶の片隅にとどまり、次の世代に伝えていってくれたら、これほどうれしいことはないと思っている。