活動会員のレポート

人生三毛作への挑戦

  平岡 ひらおか 豊文 とよふみ (元 三井物産)


授業風景

 通算12年間の海外駐在(スペインなど)を含め三井物産で30年間勤務した後、関西外国語大学で特任教授として11年間「貿易実務研究」「ビジネス英語」などの講座を持ち教壇に立った。その間、米国ビジネス界におけるプレイン・イングリッシュ(Plain English)の現状をテーマとした研究を行い、国際ビジネスコミュニケーション学会で論文を2本発表した。大学退官後、その延長線上で引き続き大学で講義ができればと思いABIC活動会員登録をしたところ、ABIC関西デスクより2018年に京都外国語大学大学院の講座「国際ビジネス研究」の非常勤講師としての職をご紹介いただき現在に至っている。
 2021年度春学期は、「国際ビジネスの発祥と歴史」「戦後に構築された新たな自由貿易による世界経済体制」「WTOの問題点と自由貿易協定(FTA、EPA、TPPなど)」のテーマで3回、秋学期は、「グローバルな観点からの市場と経済」「EUの状況と世界経済に及ぼす影響」のテーマで2回講義した。学生数は、大学院なので10人前後とこぢんまりしているが、日本人の学生以外に中国等からの留学生もおり違った視点から国際ビジネスを捉えた意見が聞けて興味深い。
 従来少人数の教室で授業が行われ、和気あいあいとした雰囲気で学生とのコミュニケーションもスムーズに行われていた。しかし、コロナ禍で状況が一変する。2020年度はオンラインのみの授業。2021年度秋学期はコロナも落ち着きを見せ、オンライン学生と対面学生がそれぞれ7対3の比率の混合授業となる。画面には講師がパワーポイントを映し出し説明するので、オンライン学生全員の顔が見えず、気が付いたら眼前にいる対面学生に向かってばかり話し掛け、オンライン学生がおろそかになっているという現実を幾度も経験した。オンライン学生とのコミュニケーションは、対面学生のようにスムーズにいかないので、なるべく「パワーポイントの画面はちゃんと出ていますか」「ちゃんと聞こえていますか」「何か質問はありますか」とプリミティブな方法であるが、途中で何度も確認しながら進行するように努めている。
 授業は、次の点に留意して進めている。

(1)世の中の変化のスピードが速いので、古い情報は学生をミスリードする。なるべくアップデートな数字を挙げて説明する。

(2)理論だけでなく、商社勤務時代のビジネス実体験、特に債権回収などの苦労話にもできるだけ触れる。

(3)ビジネスの動きの背景にある国際情勢について解説する(米国のCNN、英国のBBC、フランス国営放送のFRANCE 2などのインターネット配信を視聴し生の情報を伝える)。

(4)学生から質問がない場合は、こちらから逆質問する。学生から「わかりません」という回答は許さない。

(5)100分間と授業時間が長いので途中で雑談もいれて息抜きする(関西外国語大学当時の授業で話した雑談をまとめて2018年に「雑談力で差がつく英会話」(文芸社)を出版)。

 2021年に古希を迎えたが、振り返れば三井物産での商社マンとしての第一の仕事、関西外国語大学教授という第二の仕事の後、京都外国語大学大学院非常勤講師という第三の仕事に巡り会えた。第三の機会をご紹介いただいたABICに感謝しつつ、現在人生三毛作にチャレンジ中である。キャンパスでdigital nativeと呼ばれる若い学生の皆さんと触れ合いながら刺激を受け、オンライン授業に弱音を吐くことなく、第4次産業革命と位置付けられるAI、IoTなどの流れに振り落とされないように今後とも日々精進してゆく所存である。