活動会員のレポート

高知県のかまぼこ店への支援

  もり 岳三 がくそう (元 住友商事)


山本かまぼこ店の山本専務と(左が筆者)
出典:『冷食タイムス』水産タイムズ社

シーフードショーで人気
『冷食タイムス』水産タイムズ社
2020年10月13日

 新型コロナウイルス感染拡大(以下、新型コロナ)の第2波が来つつあった2020年7月ごろにABICから連絡があり、室戸市在のかまぼこ工場の輸出業務支援をしてくれないかという相談であった。
 きっかけは、高知県移住促進・人材確保センターが県への移住を推進するために、県の企業への技術、経営、販売等について専門家が支援することによって被支援企業の規模拡大を図り、よって県の人口増加を図ろうとしている中で、山本かまぼこ店が同人材確保センターに支援者紹介を要請し、センターがABICに人材紹介を依頼。ABICから私に協力できるかとの打診があったものである。
 私は住友商事食品部門の出身であり、その後全国版食品問屋の連合会事務局を務めていたことから、1)まずは知人の多い国内販売から始める、2)新型コロナの第2波にある中で、訪問販売のために頻繁に外出することは難しく、既知の国内食品問屋宛てに電話やメールでのリモート商談ということでもよいのか、という2点について確認すべく、Zoom面談を行った。
 新進気鋭の社長は高知県版ではあるが早くからHACCP(注1)の取得やハラール認証(注2)を取得して、有名百貨店のハラールコーナーへの出展も果たしていたことも聞き、この人なら支援のしがいがありそうだと感じ、有力問屋にサンプルを持ち込んで試食をしてもらった。「これはおいしい商品だナ~」という食の専門家の言葉を聞いて、営業支援をお引き受けすることを決意した。
 その後関東圏の有力問屋にサンプルを持ち込んだが、なかなか成果が出ない。理由は、新型コロナの中で、問屋自体が実需先との商談ができない状態であると同時に、実需先としても来客減で新規商品の売り込みができる状態ではないというのが実態であったが、カタログ販売で協力してくれた先もあった。
 一方で2030年の農林水産物・食品の輸出5兆円を目標にしている日本政府の輸出促進活動は年々活発化しているように感じるが、最近は新型コロナにより出展型商談会ができなくなり、オンライン商談会が活発化している。JETRO主催により、輸出を希望している日本企業と、日本食品の輸入を希望する海外バイヤーを登録し、オンライン商談の調整を行うものもあり、特に日本の外食市場が縮小している中で海外向けへの支援を中心に据え、ホームページの英語の作成や、オンライン商談のためにパワーポイント英文版への翻訳、オンライン相談会のアレンジに注力している。
 最初の海外バイヤーとのオンライン商談はJETROの費用で通訳をつけてくれるが、その後は海外バイヤーと直接交渉となる。従ってある程度業界用語や慣習を理解して英語での交渉ができる人の支援を受けるか、それとも日本側の輸出業者に丸投げするかしかないということとなる。幸いに社長夫婦の大学生のご長男が事業承継のつもりで英語の勉強を頑張ってくれているようなので楽しみである。
 高知では「いごっそー」と呼ばれる、物事にいちずな坂本龍馬のような人を呼ぶ言葉がある。同社の社長はまさにそれ。不要な添加物・調整剤は一切使わず、可能な限り自然な原料と手作りにこだわる「いごっそー」である。その社長の「良い商品へのこだわり」によって必ず国内外で成果を得ることができると確信している。
 製造・営業・経営・経理・新工場建設等を社長夫婦が阿修羅のごとく頑張っておられる姿には頭が下がる思いであり、少しでもお役に立てる部分があればという思いで今後も支援をさせていただく所存である。頑張れ、いごっそー!

(注1)HACCPとは衛生管理の手法であり、2020年6月から食品を扱う全事業者に義務付けられた。
(注2)ハラールとはイスラムの教えにより食べても構わないものを指す。