活動会員のレポート

日本伝統文化「華道」の魅力

 兵庫国際交流会館 華道教室講師、ギャラリールポール  細坪 ほそつぼ 弘美 ひろみ


授業風景(左端が筆者)

 「8個スタンプが貯まると華道の資格を取得できます」
 単位カードを渡す時のいつものセリフである。8個のスタンプというのは、8単位すなわち華道教室を8回受講するということになる。
 ABICの留学生支援活動の一環として、日本伝統文化である華道の修得機会を広げようと2015年6月に紹介をいただき、兵庫国際交流会館(通称HIH)にて毎月1回開催される華道教室の講師を担当している。2015年の開始当初、華道教室は日本文化を理解しやすい素地のあるアジア系、とりわけ中国からの学生が多かったが、最近では欧米諸国からの受講生が増えている。
 冒頭の資格とは、華道の初心者が初めて得ることのできる初級クラスの資格のことである。その後段階的にレベルが上がり、受講を続けて単位を取得していくことによって、華道の教授者資格を得、指導者としての認定を受けることができる。2018年には准教授の資格を取得した中国からの学生がいる。日本文化に触れようと気軽に始めた参加者が、単位カードのスタンプを数え、さらに上のレベルの資格を目指すようになる。帰国後も華道を続けたいと願う学生に至っては、私が主宰するスクールで行っている『いけばなオンライン授業』を母国で視聴できないかと興味津々である。
 また、2019-21年にはABICから推薦をいただき、桃山学院大学ビジネスデザイン学部の非常勤講師として「華道の心」を単独担当している。ビジネスデザイン学部は2019年4月にスタートした。創造力と高いコミュニケーション力を身に付け「アントレプレナー(起業家)の素養と実行力を持つ人を育てる」を教育目的とする。その「教養・文化科目」である「華道の心」では、日本文化の精神性を理解し高度に洗練されたコミュニケーション力の習得を目指す。加えて、生け花を実践的に学び、立体的に空間を動かし創造していくことは思考にも広がりが生まれ、新しいビジネスをデザインする力につなげていく。HIHの留学生・桃山学院大学の学生・年齢・性別・話す言葉・文化の違いは多様であるが、華道に魅せられ、その世界観に引き込まれる。
 「生け花は単に花をきれいに飾るだけでなく、自然と人間のつながりを大切にする日本文化の精神性を感じた(アルメニア)」「華道の作品はとても魅力的で、その所作も美しく、私もまねしていきたいと思う(米国)」「四季のある日本では季節の花を使った表現がいろいろあり、伝統的な芸術の魅力を毎回発見できてうれしい(中国)」「華道を学ぶ以前に比べ、心に余裕をもてるようになった。日常生活において心を落ち着かせ丁寧に行動することを意識できるようにもなった(日本)」 このような声は指導者として大変励みになり、誇りに思う。
 花を生けながら静かに自分を見つめ、心を整える。私の出番がないほど皆、真剣に取り組み集中している。出来上がった作品を一堂に飾り、それぞれの感想を口々に、お互いの花を鑑賞する時間が楽しい。その表情はいつも笑顔と自信にあふれている。この素晴らしい日本文化を伝えるさまざまな機会を与えてくださったABIC留学生支援活動および関西デスクのコーディネーターの方々をはじめ、関係者の皆さまに心より感謝を申し上げ、今後も日本伝統文化「華道」の魅力を世界へと広めていきたいと思う。


真剣に生け花に取り組む受講生