活動会員のレポート

福島のおいしさを世界に

  舩見 ふなみ 義克 よしかつ (元 日商岩井)


ドバイでの展示会(あんぽ柿)

香港での酒類見本市(日本酒)

 ご縁があり2018年9月より福島県貿易促進協議会(http://www.f-bsk.com/)の海外販路開拓専門員として福島県産品の販路開拓の仕事に携わっており、活動概要や福島県の現状などを紹介させていただく。
 専門員の仕事は県産品の海外への販路開拓に関連した業務(主に海外の小売店・展示会での県産青果物や加工品の販売促進、海外顧客開拓等)や県内業者への貿易相談・商談支援などである。県産品の輸出は2011年の震災後は福島県に対する輸入規制や風評などで、震災前に年間150㌧余り有った農産物の輸出量が一時2㌧程度まで減少した。そのため、輸出先を従来の香港・台湾から規制の緩やかな東南アジア諸国を中心に新たな販路開拓を進め、昨年度(2019年度)は震災前の約2倍の300㌧に達した。
 恵まれた自然が育んだ県産米はマレーシア向けに年間100㌧以上出荷しており、日本の輸出米ではトップシェアを占める。全国2位の生産量を誇る桃は海外でも大変好評で、タイ・シンガポール向けなどに出荷量が増えた。甘いリンゴや食感の良い梨、2020年1月から輸出が再開された冬の味覚である「あんぽ柿」(福島産の干し柿の一種)等も人気が高まっている。香り豊かなみそ・しょうゆをはじめ種々加工食品も県内で生産されている。特に日本酒は格別で、伝統ある新酒鑑評会での金賞受賞数は7年連続日本一、記録更新中だ。「芳醇ほうじゅん、淡麗、うま口」で表される福島のお酒は海外でも評価が高い。私も利き酒師の認定を受け、微力ながら県産酒の発信に努めている。おいしい「福島のお酒」をぜひ多くの人に楽しんでもらえればと思う。
 海外渡航はコロナ禍のため2020年3月以降は停止している。それ以前は海外で試食の伴う販促プロモーションに何回か参加し、各地で多くの来場者に恵まれ盛況だった。ドバイの展示会では「あんぽ柿」が中東で人気のデーツに似ておいしいと高評価を受けた。マレーシアではおいしそうに桃を試食する母子の笑顔が、インドネシアでは来場者に丁寧に桃を勧めるマネキンの姿が、印象に残っている。香港の酒類見本市では、芳醇な県産酒を来場者に試飲いただいたが、歴史や製法など多くの質問を受け、関心の高さがうかがえた。海外での活動体験は全てが良い思い出として、日頃の仕事の力になっている。
 今年度(2020年度)は海外での活動が難しいため、県内の事業者を訪問する機会が増えた。訪問先には多忙な中温かく迎えていただき、感謝している。種々お話を伺い震災から10年がたつ今、コロナ禍という新たな困難の下、多々ご苦労されている現状を実感した。一日も早いコロナ禍の収束、皆さまの業績の回復とさらなる発展を願うばかりである。
 私は38年間商社に勤め、2018年6月に定年を迎えた。海外勤務はインドネシアはじめ4ヵ国・22年に及んだが、定年後は非営利・社会貢献的な仕事に挑戦したいと思っていた。そんな時に先輩の勧めで登録していたABICより福島県の専門員募集のメールが届いた。それが福島とのご縁のきっかけである。
 全国で3番目に広い福島県は、阿武隈高地と奥羽山脈により浜通り・中通り・会津の3地域に分かれ、それぞれ気候風土が異なり多様な文化・習慣が育まれている。職場のある県庁は中通り北部、周辺を山々に囲まれた福島盆地にあり、すぐ横を阿武隈川が流れ、気候は寒暖差が大きく変化に富む。私は新潟の豪雪地帯の生まれでもあり、このような自然に囲まれた環境は大変心地良く感じている。依然として香港・台湾はじめ十ヵ国以上が当県産品の輸入規制を続けている。早く全ての規制が解除され、豊かな自然が育んだおいしい福島県の産品を世界中に届けられる日が来てほしい。心よりそう願う日々である。