活動会員のレポート

コロナ禍での大学「オンライン授業」

  伊東 いとう 良平 りょうへい (元 伊藤忠商事)


講義の配信用Video収録

 伊藤忠商事の元上司からの引き継ぎで、ABICからの紹介で大学講師をやらせていただいてもう3年になる。法政大学、青山学院大学、関西大学での主に海外からの留学生を対象としたMarketing in Japanという半期コースの内の自動車産業についての英語による講義(2コマから4コマ。2020年は関西大学がなくなり、聖学院大学(日本語)が追加)に加え、4月より中央大学経済学部で通期の講座を持っている。前任の教授が持っていた半期の講座を発展拡大させ、「国際ビジネス(商社)コース」とし、企業でのインターンシップを取り入れた講義だ。
 今年(2020年)は新型コロナウイルスの感染拡大で、3月以降特に緊急事態宣言が発令された4月7日以降は3密を避けるために外出の制限が要請され、集合型授業を基本とする教育機関も対応に苦慮していたが、結果的に上記のすべての大学がオンラインによる授業となった。私の担当講座もすべてオンライン授業となり、この初めての「双方向遠隔授業」について私が経験し感じたことを書いてみたい。
 各大学ともオンライン授業のルール作りや教員への研修など体制・インフラを固めるための準備で開講が遅れ、担当講座のスケジュールも混乱したが、通年の中央大学は、2週間遅れで4月27日から授業が開始された。結局私の担当する大学(登録学生数)と授業形式(使用ツール)は下記の通りとなった:

 聖学院大学(29) 双方向(Teams)
 法政大学(23) 双方向(Webex)
 青山学院大学(42) On demand(Video収録による)
 中央大学(6) 双方向(Webex)

 以前から仕事などでSkypeやZoomは使っていたので、現在主流のweb会議ツールはほとんどを経験したことになる。いずれのツールもユーザーフレンドリーにできており、未体験だったTeams、 Webexともチュートリアルや2時間くらいの研修を受ければ普通のレベルであれば誰でも使えるようになる。
 オンライン講義開始時の懸念点は、著作権法により(学生の参加している大学の教室から発信を行う)「遠隔授業」に外れる(全員オンライン)場合は、著作権の例外特例が認められなかったことだが、4月28日施行の同法改正法で一定の要件を満たせば他人の著作物の引用、複製、公衆送信が通常の授業同様に認められることになった。この法整備は今後のオンライン授業の常設化に道を開くものとして歓迎される。
 授業では、通常ホスト(講師もしくは発表する学生)側の資料を画面に映し出し、各人がVideoをONにすれば聴講する学生の顔が上部もしくはサイドに数人分映し出される。対面授業と大きく異なるのは、授業をしながら聴講する学生の全員の顔が同時に見られないこと。講義に対する理解度がvividに伝わってこないため、頻繁ひんぱんに当てて発言してもらわないといけない。中央大学のように少人数の授業だとそれも可能だが、20人を超える場合は、双方向と言いながらある程度一方的にならざるを得ない。
 ダウンサイドもあるのだが、対面授業と比較してメリットも多い。移動時間も節約でき、講義の授受に場所を選ばなくなる。学生は画面を見るのに慣れている上、この手のツールに抵抗感がない。また双方向にしている限り、発言やチャットにより表裏でのコミュニケーションが可能な他、出欠もシステムで管理できる。
 既に課題やレポートの提出がオンライン化している中で、授業をインターネットで配信・共有することは自然の流れで、今回新型コロナ対策をきっかけとして図らずも土壌ができたことになる。まだ試行錯誤が続くが、平常時でも講義の一つの形として残っていくだろうし、非常勤講師もその流れに対応していく必要性を感じた。