活動会員のレポート

地震災害からの復旧を目指す北海道の町で地方創生事業に挑む

  遠藤 えんどう 研二 けんじ (元 三井物産)


むかわ町の10月の風物詩。本ししゃものすだれ干し。

穂別博物館にて「むかわ竜」のレリーフ

 2019年の春ごろにABICから、北海道で大きな地震災害から復旧途上にある、むかわ町というところで、「町づくりアドバイザー」を募集している旨の紹介をいただいた。これは内閣府が推進している地方創生事業で、「街づくり人材・組織育成事業」の一環である。その後、むかわ町の幹部の方々と東京のABIC事務所でお会いできる機会を得、お話を伺って地震の被害が予想以上に大きいこと、町の復興に大変な熱意を持って取り組んでおられることが分かった。特に一番興味を持ったのは、町の復興計画に地域商社の設立を明記しており、地域の産業復興・発展の核にする計画があるということ。
 しかも、むかわ町には世界的に貴重な白亜紀後期(約7,200万年前)に生息していた恐竜の全身骨格化石が発掘されており(通称:むかわ竜、学名:カムイサウルスジャポニクス)、長い間むかわ町の観光の目玉であった本ししゃもに加え、町の産業・観光再生の起爆剤となり得るということだった。私も興味を持ったので、さまざまな質問をさせていただいた。
 面接後、しばらくしてABICより、むかわ町から「町づくりアドバイザー」への就任要請があったと連絡をいただき、家族に話したところ、本気で北海道に行って仕事をするのかと半ばあきれていたが、特に反対はなく、妻の仕事の関係で私は単身赴任ということになった。
 2019年7月1日むかわ町に赴任。早速、地域の商工団体等へあいさつなどで町内を回るものの、町民の地域商社に対する関心は薄く、町が旗を振っていても、まだまだこれからというのが率直な実感であった。町外から来た人間に何ができるのか当面様子見という、町民の方々の反応は、ある意味当然である。しかし、町外から来た人間しかできないこともある。それは、過去のしがらみにとらわれずに、新しい取り組みができるということ。私は地域商社の事業計画を何度も書き換えて町に提出した。その骨子は以下の3点。
 ① 小さくても良いので、事業を推進する組織(企業)をできるだけ早く設立する (Speed)
 ② 恐竜ビジネスを徹底的に構築する (Target)
 ③ 1点突破で新しい事業の成功事例を作る (Breakthrough)
 おりしも、2019年7月から10月まで東京上野の国立科学博物館で開催された恐竜博の目玉として「むかわ竜」が初めて本州で展示され、67万人もの来場者があり大きな話題となった。
 これを機に、ようやく地域商社を設立して恐竜ビジネスを推進しようという機運も盛り上がり、町議会も含めたさまざまな会議、打ち合わせ、説明というプロセスや議論を経て、2020年4月1日に私と地元の方と2人で出資してやっと合同会社を立ち上げることができた。
 町からの出資は今のところないが、資金面も含めさまざまなご支援をいただいている。近い将来、株式会社とし出資者を募るのが当面の目標となる。いままでほとんど手付かずだった、恐竜グッズの開発に取り組み、クラウドファンディングでの販売で目標を大きく上回ることができた。これからは、特に若い町民の方々を巻き込んだ特産品の開発を進めて、ECサイトでの販売を重点的に行っていく予定である。
 ちなみに、むかわ地域商社M DinoはMukawa Development of Industry and Nature Organization (むかわ産業自然振興機構)の意味、もちろんDinoはDinosaurの略。