活動会員のレポート

スペイン・奈良の弓道交流

  松尾 まつお 謙二 けんじ (関西デスクコーディネーター、元 伊藤忠商事)


体育館弓道場

筆者(一番手前)も研修に参加

マヨルカ島観光(左端が筆者)

 2015年11月初め、奈良県の弓道の先生方のお供をしてスペインに行ってきた。(3人の先生と、私を含む4人のお供:総勢7人のグループ。ちなみに私の弓道暦は学生時代の4年間と2012年春に現役を退いてからの3年強の都合7年で、本来私などに声がかかるものではなかったのだが、たまたまアルゼンチン駐在でスペイン語をしゃべったことがあるということでお誘いがあったもの)
 このスペイン行きはスペインで弓道を愛好する人たちに先生が指導をされるためのもので、この交流は今回で3年目となった。きっかけは日本に長期滞在されていた弓道愛好の人がスペインに戻り、同国の連盟会長になられた。スペインの弓道レベルをもっと高めたいと考え、日本で指導を受けた先生方にスペインを訪問し指導してほしいと要請、それが3年前に実現したもの。一昨年(2014年)は逆にスペインから12人の愛好家が来日し、ほぼ1週間にわたり奈良県内の4つの弓道場で指導を受けた。今回は再度日本からの遠征になったものである。(本交流は日本側はあくまでプライベートベースであり、弓道連盟の行事ではない)
 11月5日(木)昼過ぎに関西空港を出発、アムステルダム、バルセロナ経由で研修地の地中海に浮かぶマヨルカ島に着いたのは現地時間の夜10時、時差8時間を加算すれば合計17時間余りの長旅であった。翌日は休養を兼ねてホテルに近いカテドラル、市街地等の見学や散策。研修は土曜、日曜の2日間である。
 7日(土)朝、研修の場の体育館に到着。すでに50人余りが集合していた。スペイン全土での弓道人口は100人余りであるので、その半数近くが全国各地より参集したことになる。中には遠く大西洋の北アフリカ西部カナリア諸島から駆け付けた参加者もあった。弓道を愛する気持ちが強く感じられた。
 彼らの日頃の練習は日本のような弓道場がないため、その都度体育館を借りて仮設道場を設営しなければならない。中には田舎に住んでいて、自分の広い畑の中に的を置いた露天道場を持つ人もいて、研修終了後そこに招待された。仕事現役のメンバーが大多数であるため、練習は日曜日の週1回と厳しい。その分練習には非常に真剣に取り組んでおられると感じた。
 なぜ弓道を始めたか?の質問に日本に興味を持った、なかんずく武道に興味を持ち、弓道を選んだと言う。開始後間もない人から弓道暦10年以上の人もいる。
 研修の目的は「体配」(弓を引くに当たり求められる立ち振る舞い)と「射技」(弓を引く技術)の向上を目指すことにある。日本からの先生方による「矢渡し」(競技、研修等のイベント開始時の模範演武)により研修会が開始、その後研修会参加者全員が現在自分の持つ技量で射技を行い、先生方が研修生1人ずつの実技につきメモされ、それを元にその後の個別指導に当たられた。一部通訳担当が通訳するが、弓道に使われる専門言葉は一般的に日本語のままで、スペインの人たちもその内容をほぼ理解している。初日は夜8時までの6時間余りを個別指導に、翌日は段位毎に求められる体配の研修と射技の研修を受けた。
 聞いたところによれば、ヨーロッパでは弓道を始めるにあたり射技より先ず体配から教わるとのことで、姿勢やその他動作はわれわれ日本人が逆に見習うべき点も多々あったように見受けられる。
 体育館の使用時間制限のため午後1時に終了を余儀なくされた。研修終了後の先生方の評価は、研修会開始時に比べ終了時は全員相当なレベルの向上が見られたとのことであった。
 初日の研修後、参加者全員での食事会による交流会は夜9時半頃開始…これがスペインだ。われわれ日本人は11時過ぎに退散、現地の人たちは何時までだべっていたのだろうか。1日半の研修を終え、来年も再会しましょうと約束をする姿があちこちで見られた。その後3日間ほど、一行7人はマヨルカ島とバルセロナをそれぞれの出身地の愛好家の案内で観光を楽しんだ。