活動会員のレポート

山口県立大学での講義を終えて

石田 いしだ 新一 しんいち (住友商事 顧問)


天正遣欧少年使節の肖像版画
(1586年アウグスブルグ)

教壇の筆者

 2013年4月、スペインから日本への帰国が決まった直後に、ABICから山口県立大学における講義の依頼を受けた。同大学の取り組みが平成24年度の文部科学省グローバル人材育成推進事業に採択され、そのプログラムの1つとして、公開レクチャーとセミナー for ランチの形式でスペインの生活一般に関して話してほしいというもので、講義の日程は6月25日に設定された。
 山口県立大学には日本の地域と世界の地域の懸け橋となる「インターローカル人材」の育成を目指す「国際文化学部」があり、米国人のシャルコフ・ロバート教授、樫部プロジェクトマネージャー、岩野教授が中心になってグローバル人材育成推進事業に取り組んでおられ、同学部生の大半を海外留学に送り出している。フランシスコ・ザビエルが腰を落ち着けた布教活動を許された地であり、明治維新の時に限らず数多くの秀でたリーダーを輩出してきた山口県ならではの開放的で意欲的な取り組みである。
 当日の講義は主要部分を2つに分けた。出席者の方々には興味を持って聴いていただけたように思う。
 1つは魅力あふれるスペインについてのパートであり、スペインに関する基礎知識、幾重にも重なる歴史、日本との交流、最新生活情報、安全管理のポイント、スペイン人の特徴について網羅的に語った。
 もう1つはグローバル人材育成についてのパートであり、学生諸君のmotivationを高めることを意識して次の3項目で構成した。
1)スペインにおける事業経営の体験談:自ら建設機械の販売代理店事業を立ち上げ、従業員と苦楽を共にしながら相互信頼を勝ち得ていったプロセス、そして従業員に対して常に留意していたこと。
2)天正遣欧少年使節のエピソード:カトリック教会 (イエズス会)の布教活動に運命的に巻き込まれ、16世紀に欧州に派遣されるに至った4人の幼い日本人少年がその礼儀正しく、知的で勇気あふれる言動によって、訪問した場所全てで多くの人々を感動させたことについて。
3)グローバル人材になるための7つの実践的アドバイス:
・ 日本人って素晴らしい(Identityを失うな)
・ 「言わない」は「考えていない」(積極的であれ)
・ 異文化は面白い(好奇心を持て)
・ 正直であれば友達ができる(言行一致が分かりやすい)
・ 相手の目を見て話そう(正々堂々と振る舞え)
・ 伝わってこそ意味がある(コミュニケーションを心掛け、語学力を磨け)
・ 特技は強みになる(趣味、技術、専門知識)
 今回の講義の経験を通じて、企業と大学は特定の研究・開発においてコラボするだけではなく、人材育成においても持続的に連携することが望ましいと感じた。ABICには貴重なチャンスを頂いたことに感謝すると同時に、引き続きグローバル人材育成活動において積極的な役割を担っていただきたいと思います。