活動会員のレポート

「タイ加工食品産業マネジメント」研修に講師として参加

渡邊 わたなべ 春樹 はるき (元 アサヒビール)


1月19日 講義する筆者

 2011年1月18日から22日までの5日間、ABICの紹介で「タイ加工食品産業マネジメント」研修に(財)海外技術者研修協会(AOTS)からの講師として参加したので、感想を含めて報告する。
 研修は、日本の経済産業省からの委託事業である貿易投資円滑化事業の一環として、AOTSが「泰日経済技術振興協会(TPA)」と協力して開催したものである。タイは農業国である強みを生かし、タイを「世界の台所」とするための食料品輸出政策を打ち出しているが、食品業界の食品安全管理の知識不足が問題となっている。そこで、加工食品に関する指導を行なう大学や研究機関の教育者、企業の管理者等に向けて、特に日本における食品の安全管理等の理解を深めることを目指して今回の研修を行うこととなった。

1月18日バンコック到着:
 
まだ前日の雪が残る名古屋から予定通りバンコックへ到着、搭乗前後で約30℃の気温ギャップ。出口でAOTSの駐在者と会う予定だったが、1時間経ってもホテル関係者以外のそれらしい人がいなかったため、出口付近を捜したところ、迎えの列の後に私の氏名のプラカードを持った駐在者がおられ、やっと会うことができた。聞くと、ホテル関係者が迎えの列に入れてくれなかった模様。空港から市内のホテルまで駐在者が送ってくれ、無事チェックイン。
 車中で、前日(研修は1/17から)までの講義の内容や通訳の情況を教えてもらい、翌日の講義の段取りを考えた。通訳はあまり慣れていない様子とのこと。夜、通訳対策を自分で考える。

1月19日終日講義:
 
午前9時から休憩を含め、午前・午後の合計6時間の講義。受講生は42名。テーマは「ビール工場の品質保証」として、ビール製造工程の紹介を含めて、ビールの品質保証等について説明した。私が日本語で説明し、通訳がタイ語に訳す方式。パワーポイントでの発表は、受講者は英語も理解できるとの情報から、できるだけ英語の語句を使い、通訳の話を聞きながら英文字の画面を見てもらうことにした。また一方通行の講義にはせず、1時間に一度、質問を受け、受講者の理解を深めるようにしたところ、講義終了までに質問が20問以上もあり、食品の異物混入に関する質問が多かった。


1月20日 食品加工工場見学

1月20日グループワークと工場見学:
 午前はグループワークに変更になり、主催者の依頼で課題を私が提案し、「各社の製造標準書の情況と、製造記録の情況を出し合う」ことにした。6グループの構成だが、意見交換は活発だった。
 午後は、大型バスに乗りバンコックの隣のパツンタニ県の食品加工工場を受講生と一緒に見学。そこで、現地講師のカセサート大学の准教授と合流。工場内の工程は、4Sも進んでいる状況だが作業人数の多さにびっくり。冷凍食品材料の作業のため無塵服と防寒服を着用した作業者が黙々と働く様子は、昔スパイ映画で見た秘密地下大規模工場の雰囲気だった。

1月21日研修最終日グループワーク:
 私の講義は後半だったので、前半の講師からの宿題もあるだろうと、主催者にグループワークの内容を聞くと、「あなたがやりたいように進めてほしい」との返事で、最後のまとめも私が担当になった。そこで私の講義の復習も兼ねて、「標準類のQC工程図を各グループで作成する演習」を課題として、作成の指導に当たった。
 午後からは各グループが演習成果を発表したが、多くがメーカー現場の管理職なので実践的な良いプレゼンが多かった。カセサート大学の准教授が自分からコメントを買って出てくれ、それぞれのグループに良いアドバイスをしてくれた。私からは、「現場を強くすること」の大事さを強調したコメントを説明し、発表会を終了。私から全員に修了書を渡したが、氏名を読むのに苦労した。

 今回の研修は、講義と実践演習を5日間に良いバランスで組んだ効果的なものと感じた。