マンスリー・レポート No.104 (2009年8月)
活動会員のレポート
  中央アジア・シルクロードの中核都市タシケントから
  JICAシニア海外ボランティア ウズベキスタン商工会議所中小企業育成 山本 やまもと まさる (元 日本電気)

 私は2008年1月以来、JICAシニアボランティアとして中央アジア、ウズベキスタン共和国首都タシケント市にあるウズベキスタン商工会議所のお手伝いをしている。ウズベキスタンは中央アジア5か国のひとつとして旧ソ連から1991年に独立し、計画経済から市場経済への移行過程にある若い国である。経済政策の特徴はカリモフ大統領が主導する漸進主義の市場経済化で、移行過程における経済の混乱を最小限に止めようとする政策を取る。

出張先で 筆者右、中央はシャイホフ会頭

 この国に生活して最も興味深いのは、同じような顔形が大多数を占める日本とは正反対で、住民の容貌や体型、生活様式などが実に様々なことである。公式データによる民族数は127、東アジアのモンゴル系に近い容貌の人々が一番多いが、彫りの深い西洋人型や二つのタイプの中間型やソ連時代からのロシア人も多数いる。さらに極東地域から移住の朝鮮民族も多い。現在では多様な民族が大きなトラブルなく共存共生している。アメリカは歴史の新しい多民族国家であるが、当国は歴史の古い多民族国家である。

 タシケントは旧ソ連4位の大都市で名古屋に匹敵する人口260万を擁する。3系統ある地下鉄の車内で乗客の様々な顔立ちや服装を眺め、人々の背景にある長い歴史に思いを馳せることが、当地の私の生活で最も日常的な楽しみのひとつである。

 ウズベキスタン商工会議所は中小企業の経営支援機関である。大企業は旧ソ連からの国有企業が多く非効率であるため、中小企業が市場経済移行を主導することが期待されている。商工会議所は政府機関でなくNPO法人であるが、民営化のための国有資産売却政府収入の5%が市場経済化促進目的で商工会議所の活動に投入されることが大統領令で定められており、中小企業主導の市場経済化推進に対する政府の期待の大きさが窺われる。
 同商工会議所は、全土に220の事務所を持ち、職員数は600名ほど、業務は法律面のアドバイスや商事仲裁、外国貿易や投資への支援などである。会員企業に対する経営指導力強化が今後の課題である。職員の平均年齢は若く20代と30代が中心。会頭は、対外経済関係・貿易・投資省大臣、ドイツ大使、日本大使、NATO/EU大使を歴任した当国の代表的な経済外交官僚であるシャイホフ博士で、土曜出勤も厭わない大変仕事熱心、開明的な方で、閣僚会議のメンバーも兼ね、若手閣僚の良き相談相手でもある。

 私は対外経済関係部門の活動を中心に、会頭はじめスタッフの応援をしている。ドイツ、韓国など関係の緊密な国々とは、商工会議所同士の業務提携契約などの協力関係のインフラができており、経済交流が活発であるが、残念ながら日本との間にはまだ何もできていない。昨年来訪された日本ウズベキスタン協会の嶌信彦会長からもこうした状況改善の必要性が力説され、これを契機に今年に入って日本商工会議所との提携関係実現を目指した折衝が始まった。私はこの推進の実務面に注力させていただいている。

 私の任期もあと半年と少しであるが、もうひとつのチャレンジ項目として古都サマルカンド市と奈良市の姉妹都市実現推進に動きたい。ご存知のように来年は平城遷都1300年の大規模イベントが企画されている。この一環としてかつてシルクロードで結ばれた二つの都市の提携が現代版に形を変えて実現できれば、交流活発化の橋のひとつとして有意義だと考えている。日本ウズベキスタン協会のお力をお借りして、一歩前進できればと望んでいる。

商工会議所にて 同僚の誕生祝い 筆者左から3人目 職場の仲間と近郊の保養地Parkent(パルケント)旅行
筆者右端、その左は会頭のお嬢さんとシャイホフ会頭
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