マンスリー・レポート No.71 (2006年11月)
書評『現代の総合商社−発展と機能−』
土井教之 伊藤正一 増田政靖 編
晃洋書房
定価2,700円(税別)
2006年11月20日発行

 関西学院大学経済学部では企業活動について、より具体的に学生に知ってもらうために、早くから「経済学トピックス」という特別な講座を設けてきた。2002年からは日本貿易会および国際社会貢献センターと連携して、複数の総合商社OBあるいは現役社員が自分の最も経験の深い現場の様子を直接学生に語りかける特殊講義を毎年開催している。本書はこの講義を進めていく過程の中で、2005〜2006年度の担当講師陣が、総合商社の発展、機能そして今後の課題と方向などについての議論をテキストとしてとりまとめたものである。

 大学生を対象としているため、表現をできるだけ平易にし、商社の全体像を把握しやすいように心掛ける一方、各執筆者はその道のエキスパートとして、それぞれのテーマについて、自己責任の範囲内ではあるが自由闊達な議論を展開しており、結果として多様な視点、多様な表現が混在し、ユニークな面白い読み物となっている。

 内容としては講座を主管された土井教授の商社についての産業組織論的考察に続き、戦後から現在に至る商社経営の変化、代表的な商品としての衣・食・エネルギー産業への関わり、金融・リテール分野・ビジネスモデル企画・知的財産などに関連する商社機能、最新の情報通信技術や電子商取引への取り組み、そして日中経済関係の泰斗である伊藤教授による日本商社の中国への進出状況解説などいずれも最近の話題が網羅されている。また商社の人事や組織の問題、今後の総合商社の進むべき方向など従来の類書にないテーマも取り上げていることに注目したい。一読をお勧めしたい好著である。

(国際社会貢献センター理事長 三幣さんぺい 利夫としお

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