マンスリー・レポート No.52 (2005年4月)
活動会員のレポート
  カザフスタン共和国での外国貿易実務講座雑感
    JICA短期専門家 井口いのくち 義弘よしひろ(元 伊藤忠商事)

 2005年1月に、JICA(国際協力機構)専門家の肩書きで、カザフスタン共和国、アルマティ市のカザフ経済大学に設置されている「カザフスタン日本人材センター」で、ビジネスパーソン24名に対して外国貿易実務を講義しました。

 カザフスタンは旧ソビエト連邦の構成国で、1991年に分離独立し、現在、市場経済化に邁進しており、西欧、米州、アジア等との交流により国家発展が望まれている。石油、ガス、貴金属等の地下資源に恵まれており、資源開発、産業発展のためには外資および経営のノウハウ導入が鍵と言える。

 アルマティへの直行便は日本からはなく、北回りでフランクフルトで1泊し、東方〔中国の西南〕に逆戻りしてやっとアルマティに到着する。500トンの巨体に550人を乗せて、地球を駆け巡るANAのジャンボ機から下の果てしない無人の大地を見て、「地球の懐の偉大さと、人間の叡知」に感激。地球上に63億の人、人口が増えれば、食糧不足、環境汚染で人口抑制云々されているが、人間が住んでいる場所は地球表面の5%以下?にすぎない。「地球汚染防止・改善」と富裕国家と貧乏国家、世界全体のGDP分配等々、経済的に恵まれる人が恵まれない人を助ける心を持ち、政策と実施さえすれば、何も騒ぐ必要はないと確信した。

2005年1月20日、アルマティ商工会議所で講演後、副会長室で
右からビヤロフ副会長、筆者、アキルバイバ海外経済情報部長、王井政彦JICA専門家

 さて、本題の「外国貿易実務講座」であるが、これはいかにして市場を開拓し、客先を見つけて契約し、貨物の手配、通関、船積み、決済、クレームの処理、貿易金融、外国為替などを通して、いかに効率的に、輸出・輸入から妥当な利益が得られるかの学問であり、この点が同国では一般的に理解されていないようだ。『貿易論』はありえても、『貿易実務論』はありえない、内容は全て細かい手続きも含めたミクロの学問の典型である。それだけに内容を省略しすぎると、単なる紹介になりかねず、9章からなる膨大な内容の『貿易実務全般〔初歩〕』を50頁の英語版テキスト“MECHANISM OF INTERNATIONAL TRADE”と添付資料を70頁にまとめるのに苦心した。

 カザフスタンの貿易は、ロシアおよび旧ソ連邦から分離独立した中央アジア諸国が主な相手で自由圏の貿易とかけ離れており、国内取引に近い。今回講義を通じて貿易実務の概要要点、通常の貿易の概念と英語力とリーガルマインドが、貿易には必須条件と分かってくれたことが成果と確信する。

 超美人通訳のELENA(日本からの訪問者、女優?が、「彼女の優雅さと美貌には敵わない」と言ったとかの逸話がある)が、5日間にわたり毎日3時間、貿易実務講義およびアルマティ商工会議所での講演「世界市場の鳥瞰図、JETRO、JFTCおよび総合商社、日・米間経営環境格差」を一生懸命ロシア語に通訳してくれた。

 零下18度のカザフスタンには、加湿器など商売の種は転がっている。企業進出はLNG(電気・電子製品)、Hyundai(自動車)などの韓国勢が先行しているとの印象を受けた。

 また、往路フランクフルトから7時間の機中、隣に座ったのは30歳代半ばのアルマティ市民の美人で、西欧での社内会議の帰途とのこと。名刺交換したところ、アメリカンエクスプレス銀行のアルマティ事務所長であった。流暢な英語をしゃべり、機内ショッピングで香水、装身具2、3点を約500ドル現金で支払うのを見た。旧社会主義国のカザフスタン(一人当たりGDP 1,500ドル)でも、高等教育を受けて英語ができる人は外資系企業に勤めて高収入を得ており、貧富の差が生じているように思われた。

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