マンスリー・レポート No.40 (2004年4月)
活動会員のレポート
  JICA専門家として、インドネシアで講師を経験
    上田 勲(元 三菱商事)

 JICAのODA支援をベースに、NAFED(インドネシア輸出振興庁)の下部機関として、IETC(インドネシア貿易研修センター)がジャカルタにある。今回、メダンにRETPC(地方貿易研修・振興センター)が完成し、これを機会にセミナーがジャカルタとメダンで開催されることになった。

 議題は日本の食品衛生と品質管理に関する特別研修プログラムで、それぞれの場所で2日半にわたる1人の日本人講師による集中講義を英語で行うというものである。派遣期間は2月23日から3月6日。野津ABIC事務局長の推薦もあり、引き受けたものの、大丈夫かな?の気持ちであった。

IETC(インドネシア貿易研修センター)の役員と筆者(右端)

 最初の予定では1日8時間の講義になっていたが、8時間も話す体力も知識も持ち合わせていないので、1日5時間に短縮してもらった。さらに問題は講義の内容である。商社の営業マンとしては、食品衛生や品質管理については、おおよそは判っているつもりも、詳しいことは知らない(特に筆者は!)。書面を読むだけの講義では、眠気を催すだけであることは信州大学での経験で知っている。そこで、パワーポイントにスライドを満載することにした。それと、日本からサンプルをどっさりと持っていった(大塚食品よりは多数のサンプルを頂いた。謝謝!)。視覚に訴える作戦で時間を稼ぎ、時間が余った時は、参加者自身に自社の製品の紹介とか、輸出経験や各種問題点を発表させて、セミナーでの討論形式をとることにした。

 準備がまず大変。パワーポイント・ソフトとデジカメそれにスキャナーを購入した。寒い雪の日に、旧知の(株)ホクビーの小樽工場(冷凍ハンバーグ製造工場)を訪問して、最新式の品質管理や生菌検査を勉強し、数多くの写真も撮影。三菱商事の後輩達には、冷凍野菜、果物、油脂、水産品に関して、対インドネシア貿易の現状および問題点を聞いた。メーカーでは、味の素、大塚食品、都デリカ等を訪問し、日本の食のトレンドとか各社のインドネシアに対する興味などについても聴取した。日本の輸入手続、食品衛生法、JAS規格、残留農薬基準、残留抗生物質、一般生菌数基準、動物検疫、植物検疫などはJETROより資料をもらい、整理した。

ジャカルタの参加者達と

 セミナーの参加者は、ジャカルタが13名、メダンが43名。講義は英語でとり進めて、必要によりコーディネーターが現地語で補足する形がとられた。IETCに派遣されているJICA長期専門家達が全過程あるいは部分的に同席され、講師の至らぬ所を捕捉していただいたので大いに助かった。参加者は若く、質問も活発で、生菌数基準、残留農薬基準、残留抗生物質、食品添加剤基準、包装の材質等と多岐にわたった。日本の検査(例えば、命令検査とか)が厳し過ぎるのでは、との質問もあったが、むしろ、インドネシア側の検査機関が世界的に信頼されていないこと、そして、政府がそれを認識して、改善に努力する体制にないことが、問題ではないかと感じた。

 現在、残留農薬基準にしても、世界各国で異なり、世界貿易の大きな支障となっているが、早い時期に国連傘下のCODEX委員会が国際統一基準を設定するよう期待したい。

 問題山積のインドネシアであるが、領土的には世界第5位の資源大国であり、同じアジアの発展途上国である。日本がインドネシアに寄与できることは多々あると感じたし、インドネシア人の日本に対する憧れは想像以上であった。

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