マンスリー・レポート No.22 (2002年9月)
活動会員のレポート
 

パラグアイ事情

    前田 喜章(元 日商岩井・在パラグアイ)
今年4月からJICAの海外シニアボランティアとしてパラグアイの輸出振興支援のため活動されている会員のレポートです。

 パラグアイって聞いて何を想像されますか? サッカーのチラベルト選手、ブラジルとの国境にある世界一のイタイプ水力発電所…。あまり知られていない南米の内陸国パラグアイについて少しご紹介いたします。

首都アスシオン市の殺虫剤製造会社で、プロパラグアイへ共に派遣されている平野潤氏(元 伊藤忠商事=左)と。当国では昔、日本から蚊取り線香を輸入していたが、独自に木屑を原料とした三重巻蚊取り線香を開発した。

 パラグアイは南米大陸のほぼ中央に位置し、アルゼンチン、ブラジル、ボリビアと国境を接しています。パラグアイ川とパラナ川に囲まれた東部パラグアイは国土の40%を占める肥沃な農牧地帯、一方、残りの60%の西部パラグアイはいわゆるチャコ地方と呼ばれ、ほとんど人も住まない潅木の多い大平原です。気候は亜熱帯気候で内陸のため気温の年較差・日較差が激しく、夏は40℃近くになる日もある一方、冬場は霜の降りる日もあります。国土面積は40万平方キロメートルで日本の約1.1倍、人口は約500万人、人種はスペイン人と原住民であるグアラニ族との混血がほとんどです。国民性は、中南米諸国の中では非常に温厚かつ従順な気質と言えるでしょう。

 主たる産業は、大豆、綿花、小麦、牛肉、木材といった一次産品が全輸出の70%を占め、現在、脱一次産品化、すなわち付加価値を高めた産業の育成に力を入れています。

 1998年から2000年にかけて国際協力事業団(JICA)が中心となって実施されたパラグアイ国経済開発戦略調査(EDEP)を基に、クラスター戦略というシステムによる経済復興プロジェクトが、農牧セクターを中心に実施されています(注:クラスターとは、生産性および競争力向上を図るために一分野で活動する、特定地域における企業および機関の集積を意味する)。筆者が派遣されているプロパラグアイ(パラグアイ外務省傘下の輸出促進機関)でも輸出促進と同時にメルコスール(南米南部共同市場)域内での競争力強化を主たる業務として、日夜、輸出業者や政府機関と意見を交わしています。

 当国が今後、中南米諸国の中で取り残されることなく経済発展を進めていくには、さまざまな問題が山積していますが、これまでのように他国からの援助だけに頼ることなく、自助努力によって比較優位性のある商品をクリエートしていくと同時に、汚職のないトランスパレントな政府実現がパラグアイに課せられた命題と言えるでしょう。

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