マンスリー・レポート No.21 (2002年7・8月)
活動会員のレポート
  ドミニカ共和国便り(下)
    ―ジパングの環境事情―
    高田 弘(元 三井物産 在サン・ペドロ・デ・マコリス)
 今回はJICAが私を派遣した目的でもある環境事情について記すこととする。内容が多少硬くなることはお許しいただきたい。

 ドミニカ共和国では2000年8月に環境・天然資源省が新設され、同省は環境次省と天然資源次省とから構成されている。並行して環境基本法も施行された。ちなみに日本の環境庁は1971年に設立されたので約30年の遅れがある。環境次省は各地方自治体への環境部新設の働きかけと現況調査を始めている。また現在の法律ではゴミ(固形廃棄物)処理と一般排水(雨水など)処理だけが地方自治体の担当で、その他の生活排水・大気・騒音対策はすべて国の担当となっている。ドミニカ共和国は国税だけで地方税がなく、国税の4〜5%が原則地方に還元され、それ以上は個別案件ごとに政府が援助する仕組みである。ゴミと一般排水処理だけが地方自治体担当となっているのは予算面からみると妥当な線なのかもしれない。

サン・ペドロ・デ・マコリス市役所前
受け入れ責任者ビド氏と筆者

 私が勤務しているサン・ペドロ・デ・マコリス市は人口約20万人で市職員が80人。幸運だったのは受け入れ責任者のビド氏が優秀なこと。環境次省の地方自治体部長と同市の環境部長を兼務している。環境分野での知見は私と同等である。問題点は時間・エネルギー配分が環境次省の仕事に偏りすぎて、同市の方が多少おろそかになっていることであろうか。

 同市では一日250トンのゴミを無分別でサトウキビ畑に投棄していて、途上国の常として貧民がゴミをあさり衛生的に心配である。衛生面で危険な医療廃棄物を分別収集し、市内にある会社のセメント焼成炉で高温焼却を行うべく検討中である。幸い日本のセメント会社の技術協力と、現地のセメント会社も同市に協力する合意ができたとのこと。2年の任期内に医療廃棄物焼却を軌道に乗せられるかどうか、一抹の不安がないとはいえない。全般的なことでは同市環境部の陣容を強化し、ビド氏がいない時でも環境教育の充実と環境法の遵守が可能となる体制を敷くよう、本年8月に就任する新市長にあらためて進言する予定である。

 私個人としてはペルー以来20年振りの中南米生活で、スペイン語・風俗習慣にもかなり差があり、またコロンブスの求めた黄金の国ジパングの地でもあり、公私共に好奇心を満たす材料が山積している。今のところ健康面も含め満足な状態で、2003年秋には充実感をもって帰国できるよう努力したい所存である。

 前後2回にわたり“ジパングの婚姻・環境事情”について記してきたが、読者の皆さま、ご満足いただけましたか?

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