活動会員のレポート

世界ともだちプロジェクト「リベリア どんな国かな?」

  小栁 おやなぎ 憲一 けんいち (元 日商岩井)


リベリアの子供たち

講義風景

 2020年東京オリ・パラ大会に向けて東京都教育委員会は、子供たちの国際感覚を育成する「世界ともだちプロジェクト」を推進している。豊島区立池袋第一小学校は、6月10日に定例の「としま土曜公開授業」を開催し、同プロジェクトに基づく「国際理解教育教室」を開講した。学年ごとに対象国が割り当てられ、5年生は「リベリア共和国」を学習することになり、ABICに対して講師派遣の要請があった。ちなみに、ABICは海外勤務経験豊かな会員を学校の各種要望に応じて講師として派遣してきた実績を持っており、東京都教育委員会から同プロジェクトの支援団体として指定されている。
 私は、マイクロウエーブ通信網敷設案件(円借款)遂行のため2年間(1977-78年)リベリアに駐在した。コートジボワール、ギニア、シエラレオネとの国境中継局を含む総延長1,000km(うち、舗装道路はわずか100km)にわたる25中継局への局舎建設資機材および通信機器類の輸送や据え付け工事のしんちょく管理を主業務にしたことから、内陸深部の人たちを通して、多岐で興味深い生活習慣/風習に触れる多くの機会を持つことができた。
 当初、このような体験の紹介程度と理解したが、学校側から、①現地での活動内容、②日本の支援協力形態なども併せ披露するよう依頼された。通信事業の紹介になると、例えば、通信衛星を介したGPS機能付きのスマホを使いこなす児童に、地上をはうように築く通信網敷設工事の大変さなどを、いかに平易で、分かりやすく説明するかが、大きな課題となる。
 5年生が世界気候帯を学習していることを知り、アフリカ大陸の四気候帯を色分けした分布図を作成、赤道直下リベリアが属する熱帯雨林気候帯での環境の厳しさをまず訴えた。
 リベリアの歴史は、米国の「解放奴隷」を抜きに語れないが、児童には「奴隷」という概念理解が難しいとの助言をいただく。そこで、リベリア国旗と米国独立時の星条旗を並べて呈示、その類似性や相違点をクイズ風に説明し、解放奴隷のアフリカへの帰還計画、入植から建国に至る経緯、国や首都の名前の由来を話に交えながら、リベリアの特異な歴史を紹介した。
 「インフラ整備」については、蛇口をひねるだけで水が出る「当たり前」の日本、その「当たり前」がない国に日本の支援で「当たり前」をつくりあげるお手伝いをする実行部隊と位置付けた。庭に植えたスイカを刈り取られ家主に抗議したところ、逆に「毒蛇を素早く発見するため、軒下から幅2-3mは土を露出させておけ」、と大目玉を食った話を写真で紹介しながら、現地での「生活の知恵」「タブー」を知る大切さを訴えた。傍らに展示した象牙ブレスレットなどの小物土産品、日本語表記の現地切手類には、予想以上の関心が集まった。
 後日届いた児童からの感想文で、前述の平易な表現や工夫が、児童の理解を促したことを知った。「パソコンで調べても少なかったリベリアの情報を補足できた」とのコメントも多く、生きた実体験を紹介する目的にかなったと思われる。最後に「外国人との交流には積極的に参加しよう。そして、彼らの国の言葉で『ありがとう』と言おう」と提案したところ、「頑張る」との反応を示した児童が多く頼もしさを感じた。
 この種の企画に応えるABICの国際相互理解への支援は貴重であり、その役割も大きく、さらなる活用を期待します。併せ、今回このような機会をいただきましたこと、お礼申し上げます。