活動会員のレポート

68歳にて、ハーバード大学に留学

  葉利 はり ひろし (元 三菱商事)


Harvard Yard

Adams寮外観

Widener図書館外観

ドイツ語クラスの仲良し3人組と一緒に

Harvard Business School外観

経緯
 2016年6月17日より8月6日までのほぼ2ヵ月間、ハーバード大学のサマースクールに留学した。同大学文理学部ドイツ語学科である。留学手記を寄稿するきっかけとなった背景には、

(1)会社を退職した人にとり、それまでの経験や語学力を、アメリカの一流大学にて展開することにより自分の力を試してみること、

(2)現役の企業中堅幹部にとり、いったん仕事を途中でやめて、それまでの自分を見直すチャンスとして、アメリカの大学で挑戦してみること、

(3)海外留学を志す人の数が激減している現状下で、留学を志す同輩のご子息である入社して数年の、若い人ないしは大学生に対する一種のアドバイスを送ること、

の三つがあった。なお、海外留学は、費用がかさみ大変であるが、ハーバードのサマースクールは費用も少なくてすむということもあった。私の場合は、上の(1)が該当する。
 準備のため、英語のbrush upに取り組んだ。TOEFL 100点以上合格を目標に、listeningとspeakingを徹底学習した。願書の締め切り近くになってもスコアが基準点に達しなかったが、ハーバードの試験に挑戦したところ、100点満点で97点を取得し、入学許可がおりた。これ以外の入学の条件として、B型肝炎等9種類の予防接種証明書、授業料等11,550ドルの支払い等が必要であった。どこからも推薦状は頂かず、自分の力で勝ち取った、いわゆる「無欲の勝利」である。

授業内容
 学部は、春と秋の学期は各4ヵ月間・15週間で授業が行われるが、夏はその半分の2ヵ月間・7週間で春・秋のカリキュラムを学習する。これは、通常の学科の半年間から、科目によっては1年間のvolumeに相当する。予習・復習に1日10-15時間勉強をした。クラスメート11人の内、日本人は私だけで、残りはall Americanであった。

取得単位
 学部学生の年間取得単位である32creditsの内、今回で8creditsを取得し、全教科の25%を消化した。結果、大学より届いた正式な成績証明書では、A(優;12段階の上から2番目)を取得。

サマースクールの実態

総学生数:約2,800人で、国籍は100ヵ国以上。中国人が300人で、続いて、インド人、ドイツ人が200人前後、中国、インドが経済的に台頭し、それが如実に現れている。

大学の寮:Adams House、Quincy House等、近郊に13余りの寮が存在する。小生は中でも最も古いAdams Houseに居住したが、小生が居住していた1階の部屋の斜め筋向いには、合衆国第32代大統領Franklin Delano Rooseveltが、ハーバードの学生であった1900-1904年に居住した部屋があったが、今では国の記念物に指定されている。他には、元国務長官Henry Kissingerの部屋もあった。

図書館:Widener(ワイドナー)Libraryという、全米では3番目の規模を誇る図書館がある。タイタニック号沈没で亡くなった卒業生Widenerの遺志を継いで完成される。大学全体の蔵書量は、1,450万冊に達し、大学図書館では世界最大である。

学生食堂:ハーバード・ヤードの北側のMemorial Hallの建物内に、Annenberg Dining Hallがある。映画ハリー・ポッターに出てくる魔法学校の講堂は、これをまねている。700人収容可能で、壁は欧州歴代の国王を飾ったステンドグラスで囲まれている。

クラスの雰囲気:教授は、nativeに合わせて猛烈なスピードでしゃべるが、大切なポイントは半分程度。話に付いていくには、ポイントを徹底して予習し、それにまつわるvocabularyを固めることである。


ハーバード大学の近況(2014年度)
志願者数:34,295人
入学許可数:1,662人(4.9%)
授業料/寮費/学生保険等:64,000ドル(約700万円)
親の負担額:12,150ドル(19%)
各種奨学金:48,850ドル(ハーバード大学、連邦政府、民間企業等76%)
ハーバード基金:360億ドル(3兆7,000億円)

大学院:Harvard Business School、Harvard Law School等12校存在し、卒業まで6-7年、Oxford等の3年に比べて、ほぼ倍かかる。授業料等は年間約1,000万円。

野外活動
 せっかく建国発祥地であるボストンのハーバード大学に留学した以上、New Englandの自然や歴史的遺跡に触れない訳にはいかず、週末は、大学が主催する野外遠足に参加した。ボストンの南側の辺り一帯はケープ・コッドと呼ばれ、周辺にはJ. F. Kennedy等の大統領ならびに富豪の別荘がある。ボストンは、ニューヨークよりも寒く、2月は零下20度になり雪も多い。建物と建物の行き交いは、地下のトンネルを通じて行われ、また、それぞれ独立した食堂がある。

感想
 日本人は基礎教育がしっかりしており、英語のハンディさえ突破できれば、決して、謙遜することはない。中国人、インド人は、よくしゃべり、派手なことも平気で行う。ハーバードに入学許可されたのだから、多少の開き直りも必要。思い切りアメリカ生活を楽しむことである。ハーバードは教授陣が優れており、生徒の面倒見が良い。優秀な生徒が世界中から集まっており、素晴らしい出会いもある。私も気力の続く限り、歴史か経営学で再び挑戦してみたい。同輩・後輩諸兄が、積極的に挑戦されることを望む。