活動会員のレポート

サウジアラビア大使館商務部勤務の2年間

  三神 みかみ 博美 ひろみ (元 キッコーマン)


建国記念日パーティーで
公式衣姿の商務官と筆者

商務官の執務室で商務官と筆者

 2014年4月から2016年6月まで2年3ヵ月、在日サウジアラビア王国大使館商務部に勤務した。ABICからサウジアラビア大使館商務部の紹介があったのは2013年6月ごろであったろうか。ABICからの講演案内や業務紹介メールの中に、サウジアラビア産デーツ(なつめやし)や紅海の養殖エビなどを日本の食品業界に紹介する販売促進の仕事といった募集要項があり応募した。アラビア語の堪能な人や中東に駐在経験のある人たちが応募されたそうだが、サウジアラビアどころか中東地域には一歩も足を踏み入れたこともなく、アラビア語も解さない自分がサウジアラビア大使館商務部に採用されたのはいかにも不思議だった。
 仕事を始めて1ヵ月余り過ぎた頃、私が採用された理由を商務官の秘書に聞いたところ、答えは1)デーツの市場調査資料の事前準備、2)販促方法の提案、3)調査経験があるといった理由だった。面接の事前準備は大切と実感した。
 商務官からサウジアラビア経済に関するチャートのアップデートを依頼された時のこと、プレゼンチャートの最初のページはサウジアラビアの地図で、アラビア半島全景の衛星写真が貼られていた。日本ではサウジアラビアと北のヨルダン、イラク、南のイエメン、オマーンと国境線が直線で引かれた地図を見慣れているので、日本国外務省サイトにあるサウジアラビアの地図を使用した方がよいのではと話した。これに対して商務官からは、イエメンとの国境線はいまだ解決しておらず、北の国々との国境線もサウジアラビアの考えとは隔たりがあるので、引き続き衛星写真を使用した方がよいとの話であった。
 100年前の1916年5月、第1次世界大戦連合国のイギリス、フランス、ロシアがオスマントルコの領土を分割しトルコの勢力を削ぐための密約、サイクス・ピコ協定で設定された直線の多い国境線の結果が、今の中東情勢にも影響しているようだ。
 在職2年目の2015年は、サウジアラビアと日本の国交関係樹立60周年記念行事が両国で催された。サウジアラビアからは王族などVIPが来日し出迎えと見送りに、またサウジアラビア関連のセミナーが複数のホテルで開催され商務官は大忙しだった。大使館外務部と文化部は、サウジアラビア文化や経済等の展示紹介やサウジアラビア人ダンサーによる剣の舞をアレンジした。商務部も会場前に42インチテレビを2台両面に設置したブースを設け、今日のサウジアラビア紹介の映像を流した。この映像にはアラビア語と日本語の字幕が用意されたが、日本語字幕の準備にも携わった。
 在勤中、サウジアラビア王国の建国記念日(9月23日)のパーティーに出席する機会が2回あった。国内省庁や在日公館から貴賓を招き、サウジアラビアと関係の深い各界の方々やサウジアラビア人留学生などの出席を得て都内ホテルで和やかに挙行された。パーティーではハラルにのっとった豪華な食事が供せられた。イスラム圏では当然のことだが、アルコール抜きパーティーは初めての経験であった。
 大使館はサウジアラビア人の他に国内採用のスーダン人、パキスタン人、インドネシア人、フィリピン人と50人弱ながら出身国は色とりどりの感があった。大使館商務部とは、単年度契約ながら毎年ベースアップをいただいたのは業務内容を評価いただいたものとわれながら満足している。