活動会員のレポート

茨城県の中小企業貿易支援業務

  公益財団法人茨城県中小企業振興公社トレード・アドバイサー 石川 いしかわ きよし (元 丸紅)

 3.11の震災直後の2011年4月に中小企業貿易支援業務に従事してから2016年3月末まで丸5年間業務に従事した。この間多くの企業が海外取引を拡大したいという要請に基づき支援企業と共に楽しく汗を流した。多くの成功事例の中から二つの事例を紹介したい。

ベトナム向け生鮮魚輸出


ハノイ量販店のすしパック販売コーナー
夕方50人余りの長蛇の列ができる
 2015年ベトナム向け輸出に注力した。現地の日本食材輸入卸経営者は元日系商社勤務経験があり日本食材に精通している。
 2015年現地に2回出張し市場調査とともにその社長に同行し取引先の日本料理店やスーパーに県産品の売り込み商談を行った。ベトナムは南北に1,700kmの海岸線に囲まれ水産物資源が豊富である。現地消費者は魚介類料理を好む。しかし生食する習慣はない。ところがハノイの量販店のすし販売コーナーには夕方50人以上の長蛇の列ができるほどすし、刺し身に人気がある。1パック500円から900円の価格帯。日本料理店でもすし、刺し身が人気である。生魚調理の衛生管理が信頼されている。
 たまたま茨城県大洗町のたこ加工業者の商品が現地で売り上げを伸ばしている。特種技術の蒸し加工のたこのうま味を保持した商品が人気を得ている。
 現地卸社長からすし、刺し身食材の旺盛な需要に対応するため、たこ加工品の他に高級まぐろや生鮮魚を空輸する業者を紹介してほしいとの要請を受けた。公社の所轄課の了承を得て、友人の商社OBで築地のまぐろ業者を紹介した。その結果2015年8月に4人の経営者が来日して各種まぐろの試食と取り扱い方のセミナーを実施。またこの3月には料理長含む8人が来日してまぐろおよび高級鮮魚の取り扱いセミナーを実施した。現在月間20回の空輸を行い販売拡大中である。取引パイプが広がったことにより県内の日本酒の販売開発も進んでいる。現地市場が求める食材すなわちmarket inの食材で県内にないものを県外から供給協力し取引パイプを太くできた。これにより日本酒など県内産品の販売拡大が進展した事例である。

インドネシアからの菓子原料開発輸入

日本種豆類の栽培が年中可能

標高700メートルのトバ湖を背景に(左端が筆者)
 県内の菓子メーカーが割安で安定した菓子原料を開発輸入したいと要望があった。たまたま小職が14年前にJICA専門家としてインドネシア北スマトラ州で輸出支援業務に従事した。その時支援した青年企業家が現在標高1,000mの北タパヌリ県で日本向けにさつまいもおよび大根加工品輸出に健闘している。同地では茨城県の60%の面積に28万人の零細農民が開発を求めている。原料作物の輸出開発により現地農業開発に寄与する主旨の事業案件をJICA草の根事業に申請した結果採択された。既に2年間多くの作物を試験栽培した結果、豆類が周年栽培できるようになった。現地の伝統的な栽培方法も取り入れ周年豆が栽培可能。関係者は将来年間1,000t輸出目標に意気込む。現地農業開発に貢献するとともに原料豆の安定供給を実現するめどが付いた。
 以上、私が支援した成功事例の中から2件を紹介した。今後の県内企業のますますの発展を祈っている。