活動会員のレポート

高等学校における国際理解教育

  たちばな 弘志 ひろし (関西デスクコーディネーター、元 三井物産)


須磨東高等学校での田岡会員による授業風景

尼崎小田高等学校での隅谷会員による講演風景

 ABIC会員による国際理解教育、キャリア教育のための講演、授業依頼が幾つかの兵庫県立高等学校から寄せられ、2015年11月から12月にかけて実施した。ここでは、その概略を紹介する。
 まず、2015年11月9日に須磨東高等学校で「グローバル語り部」授業の一環として、実社会で活躍するさまざまな専門職の方々が1年生の幾つかのクラスで同時並行的に授業を進める形で行われた。当日は社会保険労務士、薬剤師、弁理士、行政書士の方々に加え、ABICからは田岡会員が「国際金融」をテーマに授業を行った。この授業は生徒に今後の進路を考えてもらう「キャリア教育」の側面を持ち、田岡会員は、自身の高校から大学への進路決定と就職の経緯、その後、キャリアアップを目指し転職した外国銀行の日本支店での仕事や国際金融ビジネスにも触れながら生徒に語り掛けた。同校は総合的な学習の時間にリーガルマインド基礎と題する課題解決型の学習を行っており、社会を知り、考える人材を育成するキャリア教育の一環として今回の授業を行ったもの。
 次に12月15日にスーパーサイエンスハイクール指定校の尼崎小田高等学校で、ABIC隅谷会員が多民族国家シンガポールを例として、異なった民族が互いの人権に配慮しながら共存する社会について、全校生徒800人余りを前に講演した。歴史、文化、宗教を異にする多民族国家で、近年、日本のGDPを上回るまでに成長したアジアの先進国、シンガポールの実態を映像や音声を使いながら、多面的な解説を行った。多民族が共存してゆくために、国民生活の細部にまで厳しいルールを課し、罰則を設ける特異な国情は、生徒の大きな関心を引いた。
 続いて12月17日にはスーパーグローバルハイスクールアソシエイト校である、朝来市の生野高等学校で「グローバル語り部」授業の一環として、1、2年生を対象にABIC鈴木会員が講演を行った。自身の進路選択で考えた事、さまざまな事を思い知らされたスリリングな学生時代の米国単独旅行体験、外国銀行の日本支店での勤務経験から、文化の違いを理解すること、コミュニケーション能力の重要性、分かったふりをしない素直な態度が英語学習では大事であることなど、生徒との簡単な実技を交えながらの講演であった。将来、海外での仕事を目指す生徒にとって興味を引くものであった。
 12月22日には、相生高等学校で、ABIC寺田会員による「日本の実力と国際化」についての講演が全校生徒を対象に行われた。同校はグローバルな視点を持った「世界市民としての生き方、在り方」を考える機会を持つことを目的として国際理解講演会を毎年開催している。寺田会員は、終戦直後の荒廃した経済状態から、家電メーカー、自動車メーカーが苦労を重ねながら、世界のマーケットにビジネスを展開していった事例を分かりやすく解説し、さらに日本企業の優秀な電子部品や製品が現在も世界のさまざまな分野で高く評価されていることにも触れた。国際理解教育の側面と生徒の今後の進路選択への意欲を引き出す講演であったことが、授業後の生徒の感想から読み取ることができた。
 ABIC会員による高校生を対象とする国際理解やキャリア形成のための授業は、2016年に入ってからも、川西明峰高等学校、西脇高等学校で予定されており、ABIC関西デスクは会員とのコミュニケーション、講演、授業実績の評価を通じ、これからも適材を派遣し、高等学校からの要望に応えられるよう努めてゆく。