活動会員のレポート

カンボジア・ポイペト事情

  山田 やまだ 与重 ともしげ (元 伊藤忠商事)


SANCO経済特区正面にて

カンボジア側から見たタイ国境。
この間約300mがカジノ地区

牛の朝の散歩

 2014年10月にカンボジアにある経済特区で働くというABICからのメール案内に応募し、首尾よく採用された。そして、ここポイペトSANCO経済特区(カンボジアと日本の合弁会社)に駐在してあっという間に6ヵ月が経過した。ポイペトはタイとカンボジアの国境の町で、タイ側の町の名前はアランヤプラテート、バンコクまで約300kmの距離にある。ポイペトは(1)世界遺産アンコールワットへの通り道、(2)カジノのある町、で知られている。最近は経済特区が3ヵ所(2ヵ所はすでに開業済み、1ヵ所は間もなく造成開始)に増え、「経済特区の町ポイペト」が第3の特徴になりそうである。
 SANCO経済特区は2013年から開発が始まり、現在2社が工場を建設中、1社は日本の日本発条、もう1社はタイの鉄骨構造メーカーである。将来的には20社ぐらいの入居を予定しており、20社が操業を始めるとおよそ1万6,000人の従業員が働くことになる。私の仕事は、SANCO経済特区の全体管理とテナントの誘致である。タイに隣接しているということ、また労働力が豊富で賃金レベルがタイに比べるとかなり低い(カンボジアの2015年度の法定最低賃金は$128/月)ということで、いわゆるタイ+1を検討されている企業からの問い合わせが大変多くなっている。この地域にはまだまだ本格的な工場が少なく、大部分の若者は農業に従事するしかない。われわれの経済特区が発展してゆくといろいろな業種の企業が進出することになり、仕事の幅が広がると同時にたくさんの雇用を生み出すものと期待をしている。
 さて、ポイペトでの生活面だが、カンボジアの田舎町ということでお世辞にも便利で快適とはいえない。ただ、唯一の救いは、上述したカジノ地区があるということである。タイとの国境に位置しているので、連日タイからのカジノ客が押し寄せてきており、老若男女それに小さな子供までがカジノを楽しんでいる。ドレスコードなし、年齢制限なしで、タイからの日帰りあるいは数泊宿泊して楽しむ、いわゆるレジャーランドのイメージである。そのカジノ客のためにカジノ地区には各国のレストランがそろっており、味もタイの方々の味覚を満たすレベルで合格点だ。日本料理店もあり、刺身、すしもある。このカジノ地区に限れば衛生面も大丈夫、ビールに氷を入れて飲むのが一般的だが問題はない。また、肉・魚などの生ものは置いていないが、タイの国内にあるような小型のスーパーマーケットもある。
 ポイペト市は周囲の自治体を含めても人口10万人程度の町で、市内に交通信号はなく、国道5号線(いわゆるメコン南部経済回廊)を中心に町が発展している。基本的に人も動物も自由で、犬も牛も子ヤギも野放しである。出勤の途中で牛の朝の散歩によく出くわすが、付き添い人もおらず、そのうちに自分で家まで帰っているようだ。ポイペトの主要な交通手段はバイクで、タクシーも基本はバイクタクシーである。バイクは3人―5人乗りで、1人―2人乗りはかなりぜいたくとなる。住めば都のことわざ通り、駐在前の心配も今は雲散霧消している。