活動会員のレポート

横浜市助成金による中小企業海外販路開拓アドバイザー業務について

手塚 てづか 正明 まさあき (元 ケンウッド)


中南米20カ国からの使節団にLED菜園を説明、
左端が筆者(通訳兼アドバイザーとして)

キーストーンテクノロジー社の事務所にて、
LED野菜栽培装置をバックにしてアドバイザー業務

 私は、会員の藤川一弘様のご紹介で2010年にABICの会員になった。同氏は日本香港協会監事でもあり、ABICの活動でも立命館アジア太平洋大学の講師をするなど活躍されている。ABIC会員の多くが商社出身なので、世界各地に駐在経験のあるメーカー出身の私に、ABICの活動に参加するよう勧められたのが始まりだった。
 たまたま、2011年度に横浜市が横浜市内の中小企業を対象に、海外販路開拓のアドバイザーを募集する案件があり、ABIC事務局を通して応募し、運よく2011年12月よりW社(テーブルトップモニターシステム機のメーカー)の海外販路開拓アドバイザーの業務を開始した。また2012年度は、W社とJ社(医療関連光造形メーカー)の2社に加えて、2012年度11月より㈱キーストーンテクノロジー(植物工場の開発・製造)が加わり、一時期は3社の海外販路開拓アドバイザー業務を行った。2013年度(実質的に新予算が承認されてアドバイザー業務を開始したのは7月)はキーストーンテクノロジー社1社のみに絞り、現在この1社を集中的に販路開拓の支援を行っている。
 海外販路開拓アドバイザー業務とは、どのような仕事を支援するのかをまずご説明したいと思う。これら3社に共通していえることは、まず社内に海外貿易に精通している人がいない、また海外からの引き合いがあっても英語で十分コミュニケーションがとれない、具体的な海外市場の販路開拓方法がわからない、また候補会社が出てきた場合の具体的対応と英語による秘密保持契約や販売代理店契約を作成できない、海外向けの価格政策をどうしたらよいか、現地での販売後に起きるアフターセールスサービスをどのようにしたらよいか、など多くの面で、アドバイザーが具体的に指導する必要があった。
 海外販路開拓が主目的なので、販路開拓の方法として、自社の製品分野の展示会に出展するか、または出展しなくても展示会を訪問して自社と同業界の出展社のブースを訪問することで、いろいろな国の業者と接触が可能である。そして、具体的な興味を示した業者との商談を進める。次にサンプルを送付する、その後テストまたは製品評価の結果、販売代理店になりたいとの意思表示がされると、販売代理店契約書の作成を行う。販売代理店契約の条文については、取引条件や契約期間中の販売目標金額または数量の設定についても双方が合意するまで何度ものやり取りを行うので、その都度会社の意向も打診しながら妥協点に落とし込む指導を行っている。
 現在アドバイザー業務を行っているキーストーンテクノロジー社は最近話題の植物工場(LED野菜栽培システム)のメーカーであり、この会社の社長がLED野菜栽培システムを開発したことから、海外からも多数の引き合いがある。海外の引き合い相手の会社との商談については、英語によるコレポンの添削とともに交渉内容・条件について指導をしている。
 また、同社は展示会にも積極的に出展しているので、展示会での通訳と商談のアドバイスを行い、海外向けに会社・製品を説明するプレゼン資料の作成の指導と英文翻訳を行った。海外の引き合い相手の会社との秘密保持契約書、覚書、販売代理店契約書の作成も行っている。また、製品サンプルの送付やまとまった数量の出荷用に、コンテナ出荷の場合の見積もり作成についても指導を行っている。
 同社の製品はハードのLED野菜栽培システムと装置だけでなく、この装置で栽培した野菜をレストラン、ホテル、スーパーにも卸売りしている。また横浜市内で「馬車道ハイカラ野菜」のブランドで路上販売もしているユニークな会社なので、日本および世界中の国々がこの会社の技術と製品に興味を示している。この若いベンチャービジネス企業の海外販路開拓をアドバイス・指導するのはとてもやりがいのある仕事だ。私が提供するアドバイス・支援により、この若い会社が順調に事業を拡大し、世界市場に事業展開できる企業に成長できれば、アドバイザーとしてこの上ない喜びである。
 これまでの3社の海外販路開拓支援業務を通して感じることは、まず、ピカッと光るユニークな製品を持ちながら社内に英語で商談ができる人がいない、または海外にどのように進出したらよいか分からないで困っている中小規模のメーカーがいかに多いか、またそのように困っている会社に対してABICが私のような海外事業での経験豊富な人間をアドバイザーとして送り込むことで、早く海外進出の取引先を見つけ、取引を開始して輸出売り上げを拡大し、輸出先(国)も増やして、会社全体の成長・発展に貢献できることである。
 その意味であらためてABICの活動は本当に日本を元気にさせる原動力といえる。定年を過ぎてもまだまだ社会や困っている中小企業に貢献できること多し!でABIC事務局の白石コーディネーターをはじめ事務局の方々には日頃よりお世話になり、この誌面を借りてお礼を申し上げたい。