活動会員のレポート

立命館アジア太平洋大学(APU)での英語による会計学の講義

吉川 よしかわ 正男 まさお (元 丸紅)

 立命館アジア太平洋大学(APU)で2006年から2012年までの7年間、英語による会計学の講義を行った。同大学は学校法人立命館が大分県別府市に2000年に設立した国際大学で、学生数は学部・大学院を合わせて約6,400人で、その半数が外国人留学生である。
 講義のきっかけは、会計学を担当していたエジプト人の教授が母国に帰国中に急逝されたため、その補填ができないかとABICに照会があったことである。ABICのコーディネーターを中心に検討し、募集に応じた私を含めた5人の会員でAPUから依頼の2講義(学部の財務会計と大学院の管理会計、いずれも15コマ)を行う体制が短時日でできた。緊急の対応であったが、ABICのコーディネーターが迅速な調整を進められたおかげであったと思う。大学側も教務部副部長で会計学専攻の教授が窓口になり、講義の進め方などで細かいご指導を頂いた。
 初年度の講義を無事に済ませることができたこともあり、翌2007年からは学部3講義、大学院の財務会計および管理会計の計5講義(いずれも15コマ)の依頼となり2010年まで継続したが、2011年に大学側の方針で大学院の2講義に限定され現在に至っている。
 私は初年度学部の財務会計を他の会員の方と2人で担当、2年目は大学院の財務会計を分担で、3年目以降は単独で担当、講義数が増えた期間はそれに加えて学部の財務会計を分担した。講義の担当方式は当初個々の講師の負担を軽くするため、2人または3人での分担(いわゆるオムニバス方式)で始めたが、なれてきたことと大学の意向もあり、3年目からはほとんどの講義を1人の講師が単独で行う形になった。

 学部・大学院の財務会計の講義内容は米国の会計基準に基づく初級の会計学で、大学が指定するテキストを使って、勘定科目や仕訳といった会計の入門段階から始まり、資産・負債・資本という会計上の主要項目を全て網羅する幅の広い内容である。私が長く担当した大学院の財務会計では、受講者のこれまでの会計学履修経験がまちまちで、未経験の人たちに入門の部分を理解してもらった上で、その後の講義についてきてもらうことが講師としての課題の1つであった。当初、未経験の受講者の中には講義の内容を理解し、自分の努力とも相まって最終的に優秀な成績を挙げる受講者が少数だが毎年おり、これが講師としての大きな喜びでもあった。講義を行う上では会社(丸紅)を退職後、個人的興味から始めた米国公認会計士試験合格までの勉強が役に立った。
 同大学の定年規定により私は2012年をもって退職したが、後任のABIC会員に引き継いでもらって大学院の2講義は2013年も継続している。
 昨今グローバル人材の育成が産業界から強く要望されており、全国の大学が国際化の方向へ努力していることは広く知られているが、その方策として多くの大学が考えている交換留学の実現のためには英語での講義の充実が不可欠である。英語で講義ができる会員を多数抱えているABICへの協力要請は今後ますます大きくなっていくと思われる。私も自分の得意な分野でお役に立てることを心掛け研さんに努めたい。
 国際化の先端を行く大学の1つであるAPUで長年講師を務め、時代の要請に多少なりとも貢献できたのではと思うが、有意義な仕事の機会とご支援を頂いたAPUとABIC関係者の皆様に感謝申し上げたい。