活動会員のレポート

長崎県立大学夏季集中講義、3年にわたるワクワク体験報告

住友大阪セメント(株) 監査役  保坂 ほさか 庄司 しょうじ (元三井物産)


教壇の筆者

受講生と中庭にて

 ABICから「国際商品取引論」の講師募集の案内を頂いたのは2009年の年末のことである。食料・エネルギー・非鉄金属という複数の相場商品部門に長く携わった経歴から本論に馴染みもあり、会社勤務を通じ体験し培った知見をベースに、自らの価値観・問題意識等を若者達に語り掛け交流する良い機会と捉え、積極的にお引き受けすることとした。
 長崎県立大学は大学院課程を併設し、国際社会に貢献できる人材の育成を理念の一つに掲げ、国際交流に注力し留学生を積極的に受け入れている。学生の出身地は約半数が長崎県外であり、西日本に広く分布している。
 「国際商品取引論」は経済学部専門課程3・4年生の選択科目2単位15コマであり、私が遠路東京からの出講のため、8月末頃の1週間に集中講義として実施している。
 講義の準備は、出身会社の各部門に資料提供を依頼し、各産業界団体や内外の主要取引所にコンタクトを取るほか、インターネットを活用して資料収集に努め、講義の概要や資料をパワーポイントやビデオ等にまとめている。
 講義の構成は、第1章では先物市場の機能と商品取引所の課題等、第2章で主要国際商品の取引環境や価格形成要因等、第3章で食料・エネルギー危機、地球環境問題との関連等を、それぞれ考察・解説している。
 3年間で受講生総数は180名に達した。集中講義は講師にとりタフな日々となるが、学生達も連日同じ講師の講義が長時間続き決して楽ではない。その彼等を惹き付け続けるためにも、ビジネスの様々なエピソードや国際商品の主要産地ラテンアメリカの文化、更に世界遺産等の話題を適宜織りまぜている。また受講生達が能動的に学習するようにと、質問を浴びせ彼等が自ら考え意見を発表するように図っている。彼等はその大半が真面目でシャイで、当初は教室での意見発表や講師への質問等に消極的だが、授業の流れに慣れると活発に発言するようになるので、しっかりとした手応えを感じている。今年は食料安保問題に加え中国の反日運動への対応等に強い関心が示された。
 成績は講義終了時に課す小論文を中心に総合的に評価し決定している。小論文からは講義の理解度に加え各自の主義主張が読み取られ、興味深い発見もある。
 一方受講生による授業評価アンケートも行われ、その結果は講師にフィードバックされる。授業に込めた熱意や、国際社会には若者が活躍する大舞台があるというメッセージが彼等に届いているためか、結構高い評価を受け大いに励みになっている。
 卒業式等の行事で学生達と再会するのは実に楽しい。また大震災直後の見舞いや就職内定の喜びの報告等をメールで貰い、卒業後も交流が続く教え子達がいることは望外の喜びである。
 国際商品取引の諸問題がますます重要性を高める今日、これらをライフワークの一つとしてフォローすると共に、講義の品質向上を目指して来年度もチャレンジしたいと考えている。このような貴重な機会を斡旋しご指導下さったABICの関係各位に改めて感謝したい。