活動会員のレポート

メキシコ国の生活風土と水環境への意識

JICA専門家・メキシコCONAGUA(国家水委員会)水質保全業務指導アドバイザー
工藤 くどう 眞也 しんや (OPC(株))


地方自治体に設置された
小規模プラント施工掲示と筆者

大雨の中を傘なしで歩く通勤者

日本の大手商社によって
ケレタロ州に設置された
下水道施設(全体模型)

1. メキシコは太陽ぎらぎらの常夏の国?
 マヤ、アステカの古代文明を有する中南米のメキシコ、殆どの方が常夏の熱帯をイメージされていると思う。我が国の約5倍の面積を有するメキシコは、地域によって標高に大きな違いが見られる。標高2,300mに位置する首都メキシコ・シティは“一日の中で春夏秋冬”があると言われるほど気温の変化がある。一方、太平洋沿岸に位置するアカプルコ正に常夏の蒸し暑さが続く。また、更に北方のサン・ルイス・ポトシ州は乾燥地帯であり、メキシコ湾に近い山岳地帯は豪雨見舞われる。従って、メキシコの気候はとても一口では言い表すことができない。

2. 雨と友達のようなメキシコ人
 10年前に2年間、初めての中南米生活で様々なカルチャーショックを経験したが、未だに心動かされる生活習慣がある。やはりメキシコにも雨季があり、3月から6月にかけて夕方6時頃、雷とともに定期的に降り始める時期がある。
 ある程度予測できるので、降り始める前に避難場所を求めて走りだすのは私だけで、皆さんよほどの強い雨でないかぎり全く気にせず歩いている。傘を持っていない人が7~8割で、10年前は傘を販売している店をさがすのが大変だったが、最近は大型スーパーで販売されている。

3. のんきな性格と言われているメキシコにも水質環境の大きな変化が
 よく言われる例えであるがメキシコでは、約束が保障されていないと言われている。何かをお願いしても「ちょっと待って」は1時間、「明日まで待って」は何週間後、「来週まで待って」はもう何時になるか分からないと言われている。意外とこれは彼らの中でも深刻な問題のようで、私の友人も悪い習慣だと嘆いていた。しかし、私たち日本人には約束の時間が正確であることを知ってのことか、約束の時間を厳格に守ってくれることに感動したこともある。
 そのような国民感情を知っていたので、環境の整備もかなり時間を要するのではと懸念していたが、この10年間で下水道施設の普及は目を見張るものがある。10年間前には数10ヵ所であった下水道処理施設は、現在では1,800ヶ所にまで達しており、様々な処理方式を採用していた。一説によると数年前の蔓延したインフルエンザの影響もあるとのことも耳にするが、水環境に対する国の意識は大きく変化している。欧米諸国、スペイン等の経済援助が見られるが、日本の大手商社による下水道事業の支援も大規模な形で進んでいる。
 ケレタロ州で視察した下水道施設は日本の商社が地域の企業を参入させ、大規模事業で最先端の技術を導入した廃棄物リサイクルの省エネルギーシステムを導入していた。欧米諸国の援助による下水道施設も全自動式維持管理システムを取り込んでおり、メキシコの環境改善のお手本になるものと期待される。
 現在、派遣先のCONAUA(国家水員会)に残された問題は、地方自治体の中小市町村の対策である。これらの地域は大都市とは異なり、更に省エネルギー、維持管理の省力化が望まれるので、長い下水道技術の経験を有する日本技術の指導が大きな力を発揮するものと思われる。
 写真は派遣期間中に政府の資金で建設した地方自治体の小規模下水道工事の施工掲示フラッグ。
 2年間にわたって設計施工計画を指導し、現在なお工事進行中である。また、メキシコは途上国として支援を受ける立場ではなく、近隣の諸国へ技術援助をする側に立って将来活動することが期待されている。