活動会員のレポート

中米コスタリカの水と人

下川 しもかわ たけし
(JICAシニア海外ボランティア コスタリカ/サンホセ市上下水道庁環境教育アドバイザー、元 佐伯市役所)


ワークショップにて 筆者(中央)

フェリア(朝市)の様子
最南端のカマウ岬へ

東日本大震災チャリティーイベント

1. 事業実施に至る背景と具体的な活動

 2010年の統計によると、コスタリカの人口はおよそ456万人で、総人口の約30%が首都圏で生計を営んでいる。現在下水処理場が整備されていない。したがって、首都圏の未処理の生活排水はすべて、域内を流れる4本の川を通して、本流のタルコレス川に流入し、太平洋岸へ注がれる。首都圏が上流に位置しているため、汚水は常時供給され続けることになる。このため、タルコレス川は、中米で最も汚染された川の1つという汚名を得ることになった。

 対外的に環境立国として知られ、エコツーリズムなどの観光産業を推進する国にとって、汚水の問題は、国のイメージを傷つける要因になる。衛生上、健康上も悪い。コスタリカ政府は、「国家開発計画」において上下水道整備を重要課題と位置づけた。2006年にJICAとの間で円借款事業に調印、コスタリカ上下水道庁(以下AyA)を実施機関とする「サンホセ首都圏環境改善事業」がスタートした。同事業は、サンホセ首都圏における下水処理場の新設と、下水管網の整備に必要な資機材調達、及び土木工事を行い、2015年から107万人、2025年以降165万人の汚水処理を目指す。

 同時に、国で初の大規模下水処理施設建設になるため、住民に、事業内容について適切に情報を提供し、それに伴う事業効果を示して理解を得ることが極めて重要となってきた。2007年、JICA-AyAの「サンホセ首都圏環境改善事業」プロジェクト実施ユニットは、内部に環境グループ(以下UTA)を新たに設置、住民意識向上のための環境教育活動を開始した。

 しかしながら、UTAに環境教育教材がなく、活動方法が未確立の状態であったため、JICAはAyAと「サンホセ首都圏環境改善のための環境意識向上プロジェクト」を立ち上げ技術協力を推進することとなった。私は、2009年11月からUTAで上記の意識向上プロジェクトの活動に携わっている。本プロジェクトの構成メンバーは、日本人3名(短期専門家、現地コーディネーター、私)と現地スタッフ5名である。活動の全容はホームページ www.mejoramientoambiental.com をご覧いただきたい。

2. コスタリカの生活とエピソードを少し

 コスタリカ人は朝が早い。日が暮れるのが早いということがあるかもしれない。私の事務所は、午前7時45分に始まり、午後4時に終わる。午前7時に始まる事務所も珍しくない。午後5時半を過ぎる頃にはあたりは暗くなり始める。

 また、コスタリカの生活を語る上で、フェリア(朝市)を抜くことはできないだろう。フェリアとは、道の両側に百を超す出店が出て、食料品から民芸品まで売っている。ジャガイモ1個から買える庶民の台所である。

3. 最後に

 コスタリカ人に対して、他の中米諸国の人に比べて、とっつきにくい、暗いといった負のイメージを持つ人が多いようだ。私も同じような印象を持っていた、しかし…。東日本大震災の後、日本大使館主催で、大震災チャリティーイベントが行われた。JICAも1つのブースを担当した。溢れるほどの人が開場前から駆けつけてくれた。その数、1万人。多くの励ましの言葉をもらった。その中に、普段職場で話しかけられたことも無く、快く思っていなかった職員がいた。彼と奥さんに激励された。瞬間、以前の自分が恥ずかしく思えた。この日を境に、コスタリカ人に対する私のイメージは、変わった。